私とたっくんの顔を交互に見たアヤさんが、驚いて聞いてくる。

他のメンバーもびっくりしている様子。

「柚葉? どうしてここにいるの? 本当に柚葉?」

「たっくんこそ。だってキーボードの人はハルって人だって聞いてたよ」

「俺、ここではハルって呼ばれてんの。貴春(たかはる)だろ。タクと名前が似てるからってハルになったんだ」

「たっくん。なんでたっくんなのぉ~。会いたかったよ、たっくん。今までどうしてたのよぉ」

「柚葉、俺も会いたかった!」

たっくんは私に近付くとギュッとハグをしてきた。

私もそのハグに応える。

ああ、懐かしいな、たっくんのハグ。

ピアノを一緒に習っている時、私が帰る時間になるとたっくんは門まで送ってくれて、そして毎回ハグをしてくれた。

『来週も来てね、柚葉。絶対だよ。来てね』

『たっくん、ちゃんと来るよ。また一緒にピアノしようね』

幼い頃から一緒にいるから、私たちにはそれが普通のことで、たっくんのことを異性だと思って接したことがなかった。