ピアノレッスンが終わり、先生がいつものように紅茶とケーキを出してくれた。

それを食べながら、先生に聞いてみた。

「先生、たっくんはどうしていますか? ピアノ辞めちゃって、高校も違うから全然会わなくて。元気ですか?」

「貴春(たかはる)は好きな事ばかりやってるわよ。家にもあまり帰って来なくてね。でも毎日楽しそうだから、あれはあれでいいんじゃないの。私には柚葉ちゃんがいるから、いいの」

「もう、先生ってば。私はいつでもいますよ。まだまだピアノ上手になりたいし」

「今度のコンクールも花束は貴春が渡したいんですって。あの子、柚葉ちゃんのこと大好きなのよ。小さい頃からずっと一緒だったでしょ。あの子ったら柚葉ちゃんと結婚するって、今でも思っているみたいよ。その辺はまだ考えが幼いのよね」


コンクールでの花束。


入賞できた時、入賞者はもう一度ピアノを披露する。

その時に、一人だけ舞台まで花束を渡しに行けるんだけど、入賞できない時は控室でその花束を渡してもらうの。

私とたっくんはずっとお互いに花束を用意していて、たっくんが入賞した時は私が舞台まで届けて。

私は賞を取れないから毎回、控室でたっくんから労いの花束を受け取っていた。

その花束を今年もたっくんが用意してくれるんだ。

「たっくんが花束を用意してくれるんですか? もう会場にも来てくれないと思っていたから、嬉しい」

「貴春に遅刻しないで行くように言っておくわね。今年は柚葉ちゃんが入賞できるように、私も頑張って教えるわよ。スパルタを覚悟しておいてね」

「が、頑張ります」

今年の夏は忙しくなりそうだな。

来月はMGRのデモ音のレコーディング。

夏休みにはピアノコンクールとMGRのライブ。

ピアノもキーボードも頑張るよ。


ピアノコンクールにダンも来てくれるといいな。

そして賞を取ることができたら、いいな。