「こんにちは。柚葉です。お邪魔します」
「柚葉ちゃん、いらっしゃい。課題はどう? 弾けるようになったかしら?」
「はい。早弾きの所で追いつかない時があって。そこだけまだ不安です」
「この曲で次のコンクールに出るんだから、頑張りましょうね。さ、始めましょう」
私は二年に一度、コンクールに応募して発表しているの。
私はまだまだ賞なんて貰えないんだけど、ピアノの先生のお子さんはとても上手で、いつも何かしらの賞をもらっていた。
私より一歳大きくて、ピアノを始めたのは同じ頃だったのにどんどん差が開いてきて、いつも悔しい思いをしてきたんだよね。
でもその子は高校1年生になる頃にあっさりピアノを辞めてしまったの。
その子がピアノを辞めてからは教室で顔を合わせなくなったから、もう1年以上会ってない。