「なに言ってんだよ、ユズ」
「もう、大丈夫だから」
「なあ、ユズ。俺、いつユズのこと負担になってるなんて言った? なあ」
「言ってはないけど。そんな気がして」
「負担に思うくらいなら最初からユズに協力しようなんて思わねーんだよ。急にどうしたんだよ、ユズ」
香梨奈さんのことは聞けないし。なんて説明しよう。
ダンに何も返事できないでいると、
「ユズ、俺のこと嫌いか?」
「えっ?」
どう答えたらいい? 嫌いなわけない。でも好きですとも言えない。
ダンの心は香梨奈さんにあるんだもん。
「えっと、ダンのこと。好きだよ。一輝先輩に対して好きなのと同じ」
「だったら、まだこのままの関係でいいだろ」
「でも」
「でも、じゃない。一輝と同じなのは解せないけど、俺のこと嫌いじゃないなら、もう少し俺に慣れてくれよ」
「距離が近い時は緊張もするけど、前よりも平気になったよ。だから他の男の人に対しても、きっともう大丈夫」
「まだ大丈夫じゃないだろ。ライブの客は高校生の男が結構来るから。MGRの曲は結構激しいだろ。カイトが客を煽るんだよ。それがMGRの定番になってて、客もノリがいいんだ。小さいライブハウスだから客との距離が近いし、そんなステージでもユズには不安なく演奏できるようになって欲しいんだよ」
「そ、そうなの? MGRのライブってそんな感じなの? 私、そんな場所でキーボードできるかな。怖いよ、ダン」
「だから、まだ俺から離れるなよ。分かったか、ばかユズ」
「ば、ばかって! 酷いよ」