その日のバンドの練習は演奏を止めながら私の入るタイミングを確認する作業がメインで、どうにか遅れないように、速くならないように、合わせながらキーボードを弾いた。
「ユズ、凄いね。この曲はもうバッチリだよ。次の練習では3曲全部できそうだね」
タクさんに褒めてもらってホッとした。
「ユズってさ、ピアノの腕は相当あるだろ。オリジナルメンバーのキーボードのヤツに音がそっくりなんだよな」
ボーカルのカイトさんも褒めてくれたから、嬉しい。
「ハルさんという方ですか?」
「ユズはハルを知ってるの?」
「いえ、知りませんけど、さっき下のマスターに聞きました。ピアノがとても上手で凄い方なんですよね」
「そうなんだよ。結構有名らしくてさ、そんなヤツが一緒のバンドにいるって凄いだろ」
カイトさんが嬉しそうにハルさんのことを話してくれる。
「本当に凄い人なんですね。私なんかが助っ人してて大丈夫なんでしょうか」
「ユズは上手いよ」
カイトさんが私のキーボードを褒めてくれた。