あれ? ダンがいない。どこだろう。

お店の脇の細い路地を覗くと、携帯で話しているダンの後ろ姿がそこにあった。


「香梨奈、いつ会えそう?」

「会える時には連絡してこいよ。マジですぐに会いに行くから」


聞こえてしまった、ダンの話す声。

電話の相手は、香梨奈さん。

カイトさんが言っていた、ダンには香梨奈さんがいるから、だめだよ・・・。

咄嗟に身を隠し、耳を塞いだ。

聞かなきゃよかった。ダンの大切な人。ダンが会いたい人。

付き合っている人はいないってダンは言った。

それが嘘だったとは思えない。

じゃあ、香梨奈さんは?

もしかしたらダンの想っている人。

そんな大切な存在の人がいるのに、どうして私と嘘で付き合ったりするの?