すぐに戻ってくると思っていたのに、なかなかダンが帰って来なくて。
「ね、ユズ。悪いんだけど下のお店に行ってダンのこと連れ戻してくれないかな? きっとマスターと話し込んじゃってるのよ。いつもギターの話をして盛り上がってるのよね、あの二人。頼める?」
そうアヤさんに頼まれて。
「はい。ちょっと見てきますね」
私は階段を下りて1階にある楽器を扱っているお店に入ってみる。
ここは上の階のスタジオの受付も兼ねている楽器屋さんで、軽音系の楽器がたくさん並んでいる。
さすがにピアノはないけど、ショルダーキーボードが置いてあった。
ライブの時にこのキーボードを持って弾けたらかっこいいんだろうけど、肩からストラップで下げて演奏するなんて難しいんだろうな。
ショルダーキーボードを見ていたら、このお店のマスターに声を掛けられた。