「あの、カイトさん。嫌な態度をとってしまってごめんなさい。ちょっとびっくりして。私、初対面の男の人が苦手なんです。時間は掛かるかも知れませんが、よろしくお願いします」

「ユズ、可愛いよ。男が苦手だなんて、現代の天使じゃん。俺、ますます気に入った。俺がユズの男嫌いを克服してやるよ。どう?」

「だっ、大丈夫です。自分でどうにかしますから」

「ダンは大丈夫なの? 学校からここまで一緒に来たんでしょ? ダンは平気なの? た・だ・の・先輩後輩なのに」

カイトさんは鋭いな。こんな勘の鋭い人には下手な嘘は通用しない。

ダンもそれを知っているから、メンバーには嘘をつかないって言ったのかな。

そしてカイトさんの口から出た香梨奈さん。

香梨奈さんのことを聞いてみたいけど、カイトさん達に聞くのは違うよね。

それに私が香梨奈さんを気にすると、私がダンのことを好きなんだってバレてしまう。

とにかく、香梨奈さんのことを今は忘れよう。

初めてのフルメンバーでのセッションなんだから、そっちに集中しよう。

楽器それぞれの準備が終わり、弦を買いに行ったダンを皆で待った。