ダンの一歩後ろについてスタジオに入ると、初めて会うボーカルの男の人がいて、マイクをセッテイングしていた。

ベースのタクさんとドラムのアヤさんもすでにスタジオ入りしていて、それぞれ担当の楽器を調整している。

「わりー、遅くなった。すぐセッテイングするな。ユズもキーボード前に出して電源入れといて。あっ、俺、下のショップで弦を買ってくるわ」

ダンがテキパキと指示を出してから自分のギターの弦を買いにスタジオを出て行った。

「ユズ、元気だった? どう、曲は覚えられたの?」

アヤさんが声を掛けてくれた。

「はい、3曲覚えてきました。今日はよろしくお願いします」

するとタクさんが、

「ユズは初めて会うよな? おい、カイト。助っ人のキーボーディスト。ユズって言うんだ。それとユズ、こいつがボーカルのカイトだから」

「ん? ハルの代わりの人? 女の子なんだ! うっひょー、テンション上がるなー。俺、カイト。よろしくね、ユズ」

カイトさんが軽いノリで私に握手を求めてきた。

私はこんな軽い雰囲気の男の人がとても苦手。