「ユズ、嫌か?」


ダンが私の顔を見ずにまっすぐ前を向き、そんな風に聞いてくる。

「いや、じゃない・・・です」

「じゃあ、離そうとすんな。ちゃんと俺の手を掴んでろよ、な」

最後の「な」の時に私の方を向き、ニコッって笑う。

そんなダンに私は殺されそうになる。

何も返事できずにいると、

「あははっ、ユズの顔真っ赤! 昼間の仕返しだかんな。分かったか、ユズ」

お昼にダンが言っていた『俺のこと、殺さないでくれよ』と、今私が思った『殺されそうになる』は、同じこと?

あの時、ダンは私にドキドキしてくれていたってこと?

今の私のドキドキして緊張して胸がとても痛くなるこの気持ちと、あの時のダンが同じ?

そんなこと、ないよね。

ダンは私のこと想ってくれてるなんて、ないもん。

私の脳が勝手にいい方向へ考えているだけ。


私、どうしてこんなにダンのこと好きになってしまったんだろう。