私もダンと同じようにしゃがんで、髪をグシャグシャしているダンの手を止めて、ダンの顔を覗く。
「殺すなんて、そんな物騒な言葉使わないの。ね、ダ・・・ン?」
えっ? ダンの顔が、真っ赤。しかも耳まで赤い。
「ダン? どうしたの?」
「バカ! こっち見んなよ。あーー、かっこ悪りぃ」
ダンが顔を隠したまま話を続ける。
「一輝のことは心配ないから。他言するようなやつじゃないし。な、もういいだろ。ユズは先に教室へ帰ってろ」
「そうなの? もうお話はおしまいなの?」
「ああ。今日はスタジオだろ、放課後待ってるから。またその時な」
「ダン、顔上げてよ。ダンの顔が見たい」
「なぁ、ユズ。お前って本当に男に免疫ないのか? なんで俺がユズに振り回されてんだよ」
「私、ダンのこと振り回してなんかないよ。変な言い方をする」
「もう、教室帰れって。まだ弁当食べてないんだろ、昼休み終わっちゃうぞ」
もうそんな時間? スマホを見るとあと10分でお昼休みが終わってしまう時間を表示していて。
「大変、もうこんな時間。ダン、先に帰ってるね。じゃ、また放課後にね。バイバイ」
まだしゃがんでいるダンをその場に残し、私は教室へ戻った。