唯花ちゃんのことばかりを考えていて、ほとんど眠れずに目を覚まし、足取り重く学校へと向かう。
学校の最寄り駅に着くと、約束なんてしていないのに改札の外にダンが居ないか探してしまう。
「今日はダン、居ないか。はぁ」
嘘で付き合っている人を毎日駅で待っていてくれるなんてこと、無いもんね。
ダンに会えなかっただけで、沈んだ気持ちが余計に落ち込んだ。
仕方なく学校までの道のりを一人歩いていると、そんなに遅く歩いているつもりは無いのに、同じ学校の生徒たちにどんどん抜かされて、一番後ろになってしまって、いつもは15分で辿り着くところを今日は20分も掛かってしまった。
「はぁ。学校が私から逃げていくみたい。全然近づけなくて時間掛かったな」
独り言を言いながら昇降口へ入ると、そこにはダンと一輝先輩が立っていて、
「ユズ、おはよ」
「柚葉ちゃん、おはよー。今日も可愛いな」
二人から同時に挨拶をされてびっくりした。
「えっ? お、おはようございます。どうしたんですか、二人して」
「「このバカがさ、同じこと考えてやがって」」
「二人の声が被ってる。本当に仲が良いんですね」
「やめろよ、ユズ。こんなのと仲良くないから」
「はぁ、失礼な奴だな暖は。柚葉ちゃん、こんな口の悪い奴なんてさっさとやめて俺の所においで」
「漫才はいいですから。本当にどうしました? 何かあったんですか?」
「ユズ、もうあの子は心配ないから。もう大丈夫だ」
「あの子? あの子って、もしかして唯花ちゃん?」
「柚葉ちゃん、聞いてくれる? 俺がね、唯花ちゃんにバシッと言ったんだよ。そしたらちゃんと分かってくれたよ」
「やだ、一輝先輩。何をバシッと言っちゃったんですか。逆に不安になります」
「あのなユズ。最初に俺があの子に一輝はユズのこと一ミリも想っていないから心配するな、って言っといたから」
まずはダンが説明してくれた。