「よし! じゃあ俺が目を瞑って形を見ないようにするから、ユズの作った卵焼きを俺の口に入れてよ。それならいいだろ?」

「本当に見ない? 目を開けないでよ、絶対だよ」

「おう。はい、あーん」

ダンは目を閉じてから口を開けて、卵焼きが入ってくるのを待っている。

何回かに分けて口に運んだら失敗卵焼きの姿を見られてしまうかもしれないから、一気に卵焼きをダンの口に入れた。

「ユズ! 入れすぎだって。ゴホッ、ゴホッ」

ダンの口の中を卵焼きで満杯にしたからダンが咳き込んでしまった。

「ごめん、ダン。入れすぎちゃった」

ダンはゆっくりと卵焼きを噛んで、飲み込む。

「ふぅ。ユズさ、いくら見られたくないからって一気に口に入れんなよ。窒息するところだったわ」

「すみません」

「でも、美味かった。ユズはできる子なんだな。ごちそうさま」

「褒めてくれてるの? ありがとう」

「一応褒めたけど、料理は俺の方が上手いかも。ははっ」

「そうなの? ダンは何が作れるの?」

「俺な、最近袋麺作れるようになったぞ、どうだ!」

ダンが得意げに話す袋麺。それって、料理に入るの?

「袋麺って・・・」

「あ、バカにしてるだろ。そう言うユズは作れんのかよ、袋麺」

「んー、作ったことないです」

「だろ。俺の方が料理してるよな」

勝ち誇ったように笑うダンがやっぱり子供っぽく見える。