私はお弁当とスマホを持って、ダンの待つ方へと歩く。

その間もクラスの悲鳴に似た声が消えることは無く、クラス中から注目されてしまった。

「みんなにバレちゃったよ」

ダンに話したわけじゃないけど、その私のつぶやきはダンの耳に届いて。

「ユズがラインを無視するから迎えに来たんだろ。ほら、行くぞ」

行くぞ、って言いながら先を歩くダン。

「ラインなんて気付かなかったもん。ね、ダン。私たち毎日お昼は一緒に食べるの?」

「ん? イヤなのか? なんかムカツクな」

「イヤって言うかね、お友達とも食べたいでしょ。だから・・・」

「ふっ、分かってるよ。とりあえず今日は学校中に付き合っていることを分からせるためってのもあるから」

「そこまでするの? 私たち、嘘のカレカノなのに」

「いいんだよ。皆に分かってもらえればユズも堂々と免疫つけられるし。良いことしかないだろ」

「だって、私のせいでダンに告白する子がいなくなったら、ダンの出会いを潰してしまうんじゃないかな。そんな出会いを捨てちゃっていいの?」

「へぇ、ユズはそれでいいんだ。俺に本当の彼女ができてもいいんだ? ふーん」

そんな言い方でダンが笑いながら聞いてくる。

まるで私がダンのことを好きだって、ダンに気付かれてからかわれているみたい。

「ダンに好きな人ができたら、この嘘カレカノはおしまいだよ。そうしなきゃダメだよ」

「ユズは真面目だな。じゃ、早いとこ男に慣れろよ。俺のために」

「わかってるもん!」

そんな話をしながら外のベンチに隣り合って座る。