もうそれは諦めだ。
顔がタイプだとか、性格が優しいとか、高収入だとか
目に見える物で男性を見て来た。

けれど本当に人を好きになると、目には見えない引力に突き動かされて
好きにはならないという気持ちとは裏腹に、勝手に好きになってしまっているんだもん。

けれど、やられっぱなしは性に合わない。
男に振り回されっぱなしは絶対に嫌。
もしかしたら碧人さんは私のこういう所は嫌いかもしれないけど。

「でも、桃菜知ってるんだからね。 碧人さんだって桃菜の事大好きじゃんかね。
桃菜の為に家をリフォームしたり、伊織さんの家に居るって言ったら慌てて迎えにきちゃって…
瀬能さんの事だってヤキモチ妬いてたって知ってるんだからね?」

生意気な発言をしてみても、まだ不安は消えない。  伊織さんに碧人はお前が好きだろう、と言われたって鵜呑みに出来なかった。

けれど碧人さんの行動のひとつひとつを思い返してみれば、いつの日から彼も同じ気持ちでいてくれたんじゃないか。

そんな願いに僅かな確信が欲しい。
押さえつけた胸がまだドキドキいっている。