サウスマルケリアの豊富な資源は財産よ。  食物も森や植物だってそう。 このノースネクローブにない物が民の生活を潤しているわ。
 もしもそれらを容易く手に入れられたら、ノースネクローブの決して平坦ではない道のりをもっと短縮できたら。

 サウスマルケリア側も同様の狙いはあった。 そこが一致したのよ。

 ユリシスが選ばれたのはハワード家が公爵位で優秀だったからだけではない。
 彼の愛するノーラの家は男爵位よ。 そのモルガン家の男爵夫人は噂では王の愛人らしい。 そして家格的にも利用価値はある。
 あの王に数人の愛人がいるのは近隣諸国では有名な話。 男爵夫人のような立場もいれば、未亡人もいると聞く。 未婚の若い女を城に住まわせているという話も。
 サウスマルケリアの王にとって上位ではない家格の娘、尚且つ自分の愛人の娘が王女の婿の妾になり、子でも誕生すれば……。 そんな思惑が働いたのでしょう。