「王女の寝室ですよ。 このような時間にろくな知り合いでもない方が来ていいような場所ではないはずですが。 無礼にも程があるのではなくて?」

 私はごく当たり前に言った。 きっとそれが彼でなく、他の誰かだったとしてもね。

「アリッサ王女とは今日、婚約関係が内定したはず。 だとしたら既に親しき間柄と言えます。 それに昔は知り合い以上の関係だったのはご存知でしょう」

「どなたかとお間違えでは? 少なくとも私には覚えがありません」

「俺はゆうり、ノーラはほのか。 彼女は俺の見たところ、前世を記憶していないようだと貴方を見てはっきりわかった。 二人の表情がまるで違ったからね。 あぁ、もういいよね。 今は堅苦しい話し方しなくても」

 私が覚えていたとして、それが何になると言うの?
 貴方は私を振ったのよ。 そんな忘れてしまいたい嫌な記憶を掘り起こして、久しぶりに会えて嬉しいわとでも言わせるつもり?