夕食会ではユリシスとノーラの親密さを目の当たりにしたわ。
 隣同士に座るユリシスが不安そうに食事するノーラに話し掛けたり、顔を近づけたり。

 まるで昔の二人を見ているよう。
 その時点で私は気づいてしまったの。
 前世の記憶がこんなにもリアルに甦るのはあのユリシスとノーラが現れたせい。 この先もきっと二人が近くにいる限り、この最悪な気分は続く。
 そして破談にはできない、私に希望は残されていないという事が。

 絶望とはこういう状況を言うのね。

 豪華で味も匂いも素晴らしい料理が並んでいるのに、私は胸が一杯であまり食べられなかった。

 一応の夕食会が終了した後、お父様は宮廷職の面々を従えてお酒を酌み交わす為に別室に移動して行ったわ。

 ノーラは初めて訪れた国、そして自分がユリシスの妻ではなく愛妾になるという事実への不安と緊張を覚えたのか、夕食会の後は早々に客室に下がって行った。 もちろん、ユリシスも一緒にね。