「さて、こんなもんか、痛むか?」

濡れた手拭いを渡さたので一応頬を冷やしておいた。

「消毒液が沁みた以外は特に痛みはない」

特段酷い怪我でもないから、もう既に治りかかっているであろうが、そこを言及されると面倒臭いことになるので隠しておくが


さーて、ここから出たあとどうするか
先程は思考を巡らせている隙に邪魔が入ったから結論が出なかった



ふと、部屋の外から騒音が
音の出処は聞く感じ縁側の方である
またもや邪魔者の予感である。

「佐之さん!女連れ込んだってまじ!!?」
勢いよく開かれた障子の向こうには自分より小さいかそれとも同じぐらいの男の子がいた
元気よく走ってきたであろうその姿は息が切れており、肩が上下していた。


「「あっ…」」

私がいることを想定していなかったのか、それとも私がいることすら考えていなかったであろうその人は私を目視した後連れてきた人と目が合ったまま見つめ合っていた。
なぜ私がいないと思ったのか。

「うわぁああぁああー!!!!!???」

「ぁああぁぁぁーーー!!??」

先程まで見つめあってた2人のうち1人が唐突に叫び出し、それに仰天したもう1人が続いて叫び出す。
その叫び声を聞いて小さく声を上げてしまったのは内緒です。
内緒なのです。

2人とも叫んでいて気付いてないのでバレてないはずです。
バレなきゃいいのだ


「ちょ佐之さん声でけぇよ!」
「こっちの台詞だが!!??」


「いや、こちらの台詞だか!?(やか)ましいわ!
そして、誰だお前!」

妾が声を荒らげることを想定してなかったのか流石に2人して口を噤んでしまう。

1番の部外者は誰でもない妾ではある。
その部外者が名乗らず相手に名乗らすのは中々の無作法。
「あ、え?、えっと、おれ平助
藤堂平助 って言います?」

聞き流すことはやめたらしい。
なんで疑問形になったのかは分からんがおそらく混乱は続いてるのだろうと勝手に解釈しておこう。


「分かった、平助 妾は【かぐや】だ
好きに呼んでくれて構わんぞ。」

え、呼び捨て?ぎりぎり聞こえるかどうかの声遣いが聞こえてきたが、恐らく発するつもりはなさそうなので無視を決め込む。

そういえば怒涛の勢いで連れて来られたので自己紹介が済んでいなかったな。

必要はなかったが助けられた手前先程の男の名を聞いておくべきか?
 
聞いたあとは助けられた御礼にでもするべきなのか?
その前に考えて、どうにかすべき問題が山積みだからそれを片付けなければいけないな。









「女連れ込むたぁ、随分(たる)んでるんじゃねぇか?」

最近の私はどうやら考え込むが故に周りに気を取られているらしい。
いつの間にか見知らぬ人が増えていた。