「うんそうだねぇ~。なんか盛り上がっていたそうじゃない。俺酔っぱらって丸ちゃんに抱きついていたんでしょ?」
石家先生は二次会での記憶がないことを、全然悪気ない感じのニッコリ顔で話した後、煙草をまた吸い込んで口からゆっくり煙を吐いた。
「うん、そう……」
私は真顔でコクっと頷いた。
「そうだったかぁ~悪かったねぇ。あのときは俺酔っぱらっていてハメ外しすぎていたんだよねぇ~。」
石家先生は悪気ない感じでニッコリ顔で言ってきた。そして美味しそうに煙草を吸い込んだ。先生の周囲は煙草の煙が充満していた。煙草の臭いが鼻をつく。
(先生、あの時のこと本当に覚えていないんだ……)
「先生~覚えていなかったんですね~。二次会、結構盛盛り上がって楽しかったですよ~。」
私は頑張ってニッコリ笑顔を作った。ホットウーロン茶の入った湯飲みから温かな感触が手のひらに伝わり続けていた。
「もったいなかったなぁ~。あのときは酔っぱらっていて絶好調だったからなぁ。でも翌日は二日酔いが酷かったよ~。俺結構酒が残る方だからね。みんなが帰り観光やお土産買いにバスを降りていたけど、俺は頭が痛くてそれどころではなかったよ。」
石家先生は煙草を灰皿でグリグリともみ消し、また2本目の煙草を出してシュポっとライターで火をつけて吸い込んだ。煙草の臭いが更に強く鼻をついた。
「先生、翌日二日酔いで辛そうでしたねー。バスの中でずっと横になって寝ていましたもんね。」
私は努めて笑顔で言った。緊張しつつもお腹が空いてきたので、私は湯飲みから手を放して手前にある鳥の唐揚げを一つ頬張った。唐揚げをカリカリ食べながらも次話す言葉を考えていた。
「あの先生……」
石家先生の方から“ピーピー!”とポケットベルの音が聞こえた。
「ちょっと失礼。」
石家先生は右手に持っていた煙草を灰皿でもみ消し、店内にある公衆電話の方へ向かった。
数分後、石家先生は真顔で戻ってきてダウンジャケットを手に取った。
「丸ちゃんごめん。病棟から呼ばれた。高木さんからでどうやら分娩が始まるみたいだ。」
「あ、はい!」
私は急いで立ち上がってコートとバックを取った。会計を済ませて小走りに駐車場にある車まで行き、エンジンをかけた。道は空いていたので、10分以内で病院に到着しそうだ。
私は前方をじっと見つめながらハンドルを握りしめていた。急いで病院に到着しなくちゃという思いと同時に、石家先生に何かを言わなきゃという思いが交差していて、胸がドキドキ鳴り続けていた。
(今のうちに言わなきゃ!)
「あ、あの先生!」
私は前方を見たまま言った。
「ん?」
石家先生は私の方を向いた。そのとたんに私の胸はドキンと脈打った。
「きょ、今日はありがとうございました!あとオンコールなのに付き合わせてしまってごめんなさい!」
私はお礼とお詫びを述べた。もう何を言っているのかわからない感じだ。
「あぁ、いいよいいよ。俺も腹減っていたし。」
(先生やさしいなぁ……あ、そんなことより言わなきゃ、聞かなきゃ!)
道路の右斜め前に病院の建物が見えた。
「あ、あの先生!」
「ん?」
「せ、先生はいつ引っ越しするんですか?」
「あー、本当は俺31日まで勤務予定だったんだけど平日だからって、引っ越しのことを考えてちょっと早いけど29日までここで勤務して、30日の昼過ぎには東京に戻る予定になったんだよ。」
「そうですか……あ、あの、もし引っ越し準備のとき、私も手伝いに行っても良いですか?」
私はハンドルをグッと握りしめながら言った。胸のドキドキは強くなっていた。
「えっ、いいよいいよそんな~手伝ってもらうの悪いし。」
石家先生は私の方を見ながら言った。車は病院前にあるロータリーに入った。
「いや、大丈夫ですよ!私先生の引っ越しのお手伝いをしたいんです!だ、だから30日の午前中先生のところに行っても良いですか?」
私はすがるような思いで(ちょい大袈裟)先生にお願いした。胸のドキドキを強く感じていた。車は病院の救急外来入り口前に到着した。
「そうか……じゃあいいよ。」
石家先生はちょっと諦めた感じで返事をして微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!では30日午前中行きますね!」
私はとびきりの笑顔で言った。心がフワッと明るい感じがした。
(やったぁ~!アポとれた!)
「丸ちゃんありがとうね!ではまた。」
石家先生は車の助手席のドアを開けた。ドアから出る際、私の方を振り向いて右手を伸ばし、私の頭を撫でた。そしてドアを出て救急外来入り口へ入っていった。私は石家先生のスラリとした後ろ姿を見送った。車の中は煙草の臭いが漂っていた。私は頭を撫でてくれた先生の手の温かな感触と、30日アポが取れた喜びの余韻で心がウキウキしていた。
(やったぁ!最終日も一緒にいられる!!)
そんな想いが身体中をグルグル回っていた。帰りの道中、私はカーステレオから流れるJポップを聞きながら大声で歌い、ウキウキ気分でハンドルを回していた。
石家先生は二次会での記憶がないことを、全然悪気ない感じのニッコリ顔で話した後、煙草をまた吸い込んで口からゆっくり煙を吐いた。
「うん、そう……」
私は真顔でコクっと頷いた。
「そうだったかぁ~悪かったねぇ。あのときは俺酔っぱらっていてハメ外しすぎていたんだよねぇ~。」
石家先生は悪気ない感じでニッコリ顔で言ってきた。そして美味しそうに煙草を吸い込んだ。先生の周囲は煙草の煙が充満していた。煙草の臭いが鼻をつく。
(先生、あの時のこと本当に覚えていないんだ……)
「先生~覚えていなかったんですね~。二次会、結構盛盛り上がって楽しかったですよ~。」
私は頑張ってニッコリ笑顔を作った。ホットウーロン茶の入った湯飲みから温かな感触が手のひらに伝わり続けていた。
「もったいなかったなぁ~。あのときは酔っぱらっていて絶好調だったからなぁ。でも翌日は二日酔いが酷かったよ~。俺結構酒が残る方だからね。みんなが帰り観光やお土産買いにバスを降りていたけど、俺は頭が痛くてそれどころではなかったよ。」
石家先生は煙草を灰皿でグリグリともみ消し、また2本目の煙草を出してシュポっとライターで火をつけて吸い込んだ。煙草の臭いが更に強く鼻をついた。
「先生、翌日二日酔いで辛そうでしたねー。バスの中でずっと横になって寝ていましたもんね。」
私は努めて笑顔で言った。緊張しつつもお腹が空いてきたので、私は湯飲みから手を放して手前にある鳥の唐揚げを一つ頬張った。唐揚げをカリカリ食べながらも次話す言葉を考えていた。
「あの先生……」
石家先生の方から“ピーピー!”とポケットベルの音が聞こえた。
「ちょっと失礼。」
石家先生は右手に持っていた煙草を灰皿でもみ消し、店内にある公衆電話の方へ向かった。
数分後、石家先生は真顔で戻ってきてダウンジャケットを手に取った。
「丸ちゃんごめん。病棟から呼ばれた。高木さんからでどうやら分娩が始まるみたいだ。」
「あ、はい!」
私は急いで立ち上がってコートとバックを取った。会計を済ませて小走りに駐車場にある車まで行き、エンジンをかけた。道は空いていたので、10分以内で病院に到着しそうだ。
私は前方をじっと見つめながらハンドルを握りしめていた。急いで病院に到着しなくちゃという思いと同時に、石家先生に何かを言わなきゃという思いが交差していて、胸がドキドキ鳴り続けていた。
(今のうちに言わなきゃ!)
「あ、あの先生!」
私は前方を見たまま言った。
「ん?」
石家先生は私の方を向いた。そのとたんに私の胸はドキンと脈打った。
「きょ、今日はありがとうございました!あとオンコールなのに付き合わせてしまってごめんなさい!」
私はお礼とお詫びを述べた。もう何を言っているのかわからない感じだ。
「あぁ、いいよいいよ。俺も腹減っていたし。」
(先生やさしいなぁ……あ、そんなことより言わなきゃ、聞かなきゃ!)
道路の右斜め前に病院の建物が見えた。
「あ、あの先生!」
「ん?」
「せ、先生はいつ引っ越しするんですか?」
「あー、本当は俺31日まで勤務予定だったんだけど平日だからって、引っ越しのことを考えてちょっと早いけど29日までここで勤務して、30日の昼過ぎには東京に戻る予定になったんだよ。」
「そうですか……あ、あの、もし引っ越し準備のとき、私も手伝いに行っても良いですか?」
私はハンドルをグッと握りしめながら言った。胸のドキドキは強くなっていた。
「えっ、いいよいいよそんな~手伝ってもらうの悪いし。」
石家先生は私の方を見ながら言った。車は病院前にあるロータリーに入った。
「いや、大丈夫ですよ!私先生の引っ越しのお手伝いをしたいんです!だ、だから30日の午前中先生のところに行っても良いですか?」
私はすがるような思いで(ちょい大袈裟)先生にお願いした。胸のドキドキを強く感じていた。車は病院の救急外来入り口前に到着した。
「そうか……じゃあいいよ。」
石家先生はちょっと諦めた感じで返事をして微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!では30日午前中行きますね!」
私はとびきりの笑顔で言った。心がフワッと明るい感じがした。
(やったぁ~!アポとれた!)
「丸ちゃんありがとうね!ではまた。」
石家先生は車の助手席のドアを開けた。ドアから出る際、私の方を振り向いて右手を伸ばし、私の頭を撫でた。そしてドアを出て救急外来入り口へ入っていった。私は石家先生のスラリとした後ろ姿を見送った。車の中は煙草の臭いが漂っていた。私は頭を撫でてくれた先生の手の温かな感触と、30日アポが取れた喜びの余韻で心がウキウキしていた。
(やったぁ!最終日も一緒にいられる!!)
そんな想いが身体中をグルグル回っていた。帰りの道中、私はカーステレオから流れるJポップを聞きながら大声で歌い、ウキウキ気分でハンドルを回していた。