そうこうしているうちに車は忘年会会場であるT観光ホテル駐車場へ到着した。12月の夜は冷気が肌を突き刺すような感じで痛かった。私たちは肩を窄め、「寒い寒い!」と言いながら小走りで会場に入った。
ホテルのクロークへコートを預けて宴会場に入ると、看護師や医師、事務担当、薬剤師や放射線技師、理学療法士たちがガヤガヤと談笑していて賑やかであった。宴会は立食で、ビュッフェ形式であり、円卓にそれぞれ各部署の職員たちが食事をしながら談笑をしていた。
「おーい!松田さん、丸田さんこっちこっち!」
私たちは声が聞こえる方向へ進んでいくと、そこには驚くべき光景があった。
助産師高木さんが、アラビアンナイト風のゴールドとシルバーのへそ出しドレス姿で立っていたのだ。頭にはゴールドの布であしらったヘッドベールを被っていた。ゴールドとシルバーのスパンコールがドレスの特にウエストまわりを重点的にいっぱいあしらっており、まるでベリーダンスを踊り出しそうな出で立ちをしていた。本人の話によると、1か月前から宴会のために全て手作りをしたとのことだった。メイクは青いアイシャドウを瞼いっぱいに塗りたぐり、つけまつげを付けているけどまつ毛が眼の縁からかなりズレていた。真っ赤な口紅を分厚く塗りたぐっており、その様は人を食った後の妖怪に見えた。その隣には紫のビロードのスーツパンツ姿の米倉主任が立っていた。高木さんの隣にいるせいか、米倉主任がやや地味に見えた。でも顔は紫のアイシャドウに真っ赤な口紅を塗りたぐっているので、人を食った後の鬼に見えた。その二人を囲むように谷中さんや木村さんたちが立っていた。そんな二人の姿を見たとたん、私たちは同じ場所に行くのに抵抗を感じた。
「おーいこっち。遅いじゃん!」
高木さんが手招きして私たちを呼んだ。背が高いのですぐにわかった。
「さ、飲みなよ。あと食べ物は好きなものを取ってきなよ。」
谷中さんが私たちにコップを渡してきた。松田は早速ビールを飲んでいた。私は車を運転している都合もあり、オレンジジュースを飲んだ。
私たちが到着して15分後くらいに、喜屋武教授に連れられて石家先生が会場内に入ってきた。
「先生、こっちこっち!」
「やぁどうもどうも。」
石家先生はこの間二人で呑みに行った時と同じように赤いダウンジャケットの下にはグレーのパーカートレーナー、チノパンツ、白スニーカーといったラフな格好だった。
「僕、こんなのしか服持ってきていないから。」
石家先生は照れ臭そうに話した。
「先生達も来たことだし、乾杯しよう!カンパ~イ!」
高木さんが乾杯の音頭を取り、私たち産婦人科病棟チームは各自グラスを持って乾杯の声を挙げた。
米倉主任と喜屋武教授は序盤からビールを飲みまくり、すぐに顔は真っ赤になっていた。酔っ払い度はすぐに増してきて、そのうち二人は寄り添い、米倉主任が説教を垂れ、喜屋武教授が「そうそう」と相槌を打っていた。私たちは石家先生を囲んで談笑をした。
「先生、大分ここにも慣れてきて、もう産婦人科病棟ではなくてはならない存在になってきたよね。」
木村さんがビールを飲みながら言ってきた。
「そんなこと言ってくれて嬉しいですよ~。」
石家先生が真っ赤な顔をクシャっとさせて嬉しそうに答えた。
「先生、ずっとここにいなよぉ~!喜屋武先生から本院の教授へ打診してもらおうよ~!」
高木さんが赤ワインを飲みながら目の座った真っ赤な顔をして言ってきた。
(この間私が言ったことと同じことを言ってる。やっぱりみんなそう思っているよね。)
私はこの間二人で飲んだときに石家先生へ言ったことを思い出した。
「僕もそうしたいですよぉ~。本当は戻りたくないと思っているんですよぉ~。でももう1月から行く場所が決まっているんですよぉ~。」
石家先生はビールの入ったコップを片手に持ちながら真っ赤なクシャクシャ笑顔で言った。そのとき既にビールをコップ5杯は呑んでいた。
「え~!そんなぁ~!先生いてくださいよぉ~!」
谷中さんも赤ワインを飲み干しながら残念そうに言ってきた。
(みんなもっと言ってほしい!石家先生にここへ留まるように言ってほしい!もっと言ってほしい!)
私はその光景を見ていて、先生にはもっとD病院にいてほしい、12月までと言わずもっといてほしいと強く思った。思いながらオレンジジュースを3杯飲み干していた。高木さんはいつのまにかポッコリお腹のへそ出しアラビアンナイトの衣装を身に着けて宴会場内を腰をクネクネ動かしながら歩き回っていた。ベリーダンスをするわけでもなく、何か芸をするわけでもなく、ただただピンクと紫の生地に金色スパンコールを大量に付けたお手製のアラビアン衣装を自慢しているだけであった。
(うわぁ……やっぱあの人変わってんなぁ……)
私はそんなクネクネと歩き回るアラビアン高木さんを、遠くからオレンジジュースを飲みながら冷めた目で眺めていた。
そうこうしているうちに忘年会は終わりの時間を迎えた。
「じゃあ、お疲れ様で~す!」
皆で宴会場を出ようとしていたとき、米倉主任が声をかけてきた。
「おい丸田、お前車で来たんだよな。」
「はい、そうですけど……」
「じゃあ、喜屋武先生と石家を病院まで送って行ってよ。」
「えっ?あ、はい!」
私は驚いて喜屋武教授の方を見た。
「丸田く~ん、頼むよ。」
喜屋武教授は真っ赤な顔でニコっと笑って言った。隣では石家先生が真っ赤なクシャクシャ笑顔で立っていた。早いペースでビール10杯以上と赤ワインを数杯飲んでいたので相当酔っているらしく、身体は若干ふらつきが見られていた。
「丸ちゃ~ん、あの高級車に乗せてくれるのぉ~?うれしいなぁ~。」
石家先生は真っ赤なクシャクシャ笑顔で言いながらふらついた足どりで近づいてきた。ほのかにアルコール臭が漂っていた。
「あ、はい。い、今入り口まで車を回しますね。」
私は急いでホテルの受付に寄ってクロークからコートを受け取り、肌を突き刺す冷たい風が吹いている中、小走りで駐車場へ向かった。車に乗り込み、ホテル入り口前へ向かった。入り口前には
松田さん、喜屋武教授と真っ赤なクシャクシャ顔をして目が座っている石家先生が立っていた。
ホテルのクロークへコートを預けて宴会場に入ると、看護師や医師、事務担当、薬剤師や放射線技師、理学療法士たちがガヤガヤと談笑していて賑やかであった。宴会は立食で、ビュッフェ形式であり、円卓にそれぞれ各部署の職員たちが食事をしながら談笑をしていた。
「おーい!松田さん、丸田さんこっちこっち!」
私たちは声が聞こえる方向へ進んでいくと、そこには驚くべき光景があった。
助産師高木さんが、アラビアンナイト風のゴールドとシルバーのへそ出しドレス姿で立っていたのだ。頭にはゴールドの布であしらったヘッドベールを被っていた。ゴールドとシルバーのスパンコールがドレスの特にウエストまわりを重点的にいっぱいあしらっており、まるでベリーダンスを踊り出しそうな出で立ちをしていた。本人の話によると、1か月前から宴会のために全て手作りをしたとのことだった。メイクは青いアイシャドウを瞼いっぱいに塗りたぐり、つけまつげを付けているけどまつ毛が眼の縁からかなりズレていた。真っ赤な口紅を分厚く塗りたぐっており、その様は人を食った後の妖怪に見えた。その隣には紫のビロードのスーツパンツ姿の米倉主任が立っていた。高木さんの隣にいるせいか、米倉主任がやや地味に見えた。でも顔は紫のアイシャドウに真っ赤な口紅を塗りたぐっているので、人を食った後の鬼に見えた。その二人を囲むように谷中さんや木村さんたちが立っていた。そんな二人の姿を見たとたん、私たちは同じ場所に行くのに抵抗を感じた。
「おーいこっち。遅いじゃん!」
高木さんが手招きして私たちを呼んだ。背が高いのですぐにわかった。
「さ、飲みなよ。あと食べ物は好きなものを取ってきなよ。」
谷中さんが私たちにコップを渡してきた。松田は早速ビールを飲んでいた。私は車を運転している都合もあり、オレンジジュースを飲んだ。
私たちが到着して15分後くらいに、喜屋武教授に連れられて石家先生が会場内に入ってきた。
「先生、こっちこっち!」
「やぁどうもどうも。」
石家先生はこの間二人で呑みに行った時と同じように赤いダウンジャケットの下にはグレーのパーカートレーナー、チノパンツ、白スニーカーといったラフな格好だった。
「僕、こんなのしか服持ってきていないから。」
石家先生は照れ臭そうに話した。
「先生達も来たことだし、乾杯しよう!カンパ~イ!」
高木さんが乾杯の音頭を取り、私たち産婦人科病棟チームは各自グラスを持って乾杯の声を挙げた。
米倉主任と喜屋武教授は序盤からビールを飲みまくり、すぐに顔は真っ赤になっていた。酔っ払い度はすぐに増してきて、そのうち二人は寄り添い、米倉主任が説教を垂れ、喜屋武教授が「そうそう」と相槌を打っていた。私たちは石家先生を囲んで談笑をした。
「先生、大分ここにも慣れてきて、もう産婦人科病棟ではなくてはならない存在になってきたよね。」
木村さんがビールを飲みながら言ってきた。
「そんなこと言ってくれて嬉しいですよ~。」
石家先生が真っ赤な顔をクシャっとさせて嬉しそうに答えた。
「先生、ずっとここにいなよぉ~!喜屋武先生から本院の教授へ打診してもらおうよ~!」
高木さんが赤ワインを飲みながら目の座った真っ赤な顔をして言ってきた。
(この間私が言ったことと同じことを言ってる。やっぱりみんなそう思っているよね。)
私はこの間二人で飲んだときに石家先生へ言ったことを思い出した。
「僕もそうしたいですよぉ~。本当は戻りたくないと思っているんですよぉ~。でももう1月から行く場所が決まっているんですよぉ~。」
石家先生はビールの入ったコップを片手に持ちながら真っ赤なクシャクシャ笑顔で言った。そのとき既にビールをコップ5杯は呑んでいた。
「え~!そんなぁ~!先生いてくださいよぉ~!」
谷中さんも赤ワインを飲み干しながら残念そうに言ってきた。
(みんなもっと言ってほしい!石家先生にここへ留まるように言ってほしい!もっと言ってほしい!)
私はその光景を見ていて、先生にはもっとD病院にいてほしい、12月までと言わずもっといてほしいと強く思った。思いながらオレンジジュースを3杯飲み干していた。高木さんはいつのまにかポッコリお腹のへそ出しアラビアンナイトの衣装を身に着けて宴会場内を腰をクネクネ動かしながら歩き回っていた。ベリーダンスをするわけでもなく、何か芸をするわけでもなく、ただただピンクと紫の生地に金色スパンコールを大量に付けたお手製のアラビアン衣装を自慢しているだけであった。
(うわぁ……やっぱあの人変わってんなぁ……)
私はそんなクネクネと歩き回るアラビアン高木さんを、遠くからオレンジジュースを飲みながら冷めた目で眺めていた。
そうこうしているうちに忘年会は終わりの時間を迎えた。
「じゃあ、お疲れ様で~す!」
皆で宴会場を出ようとしていたとき、米倉主任が声をかけてきた。
「おい丸田、お前車で来たんだよな。」
「はい、そうですけど……」
「じゃあ、喜屋武先生と石家を病院まで送って行ってよ。」
「えっ?あ、はい!」
私は驚いて喜屋武教授の方を見た。
「丸田く~ん、頼むよ。」
喜屋武教授は真っ赤な顔でニコっと笑って言った。隣では石家先生が真っ赤なクシャクシャ笑顔で立っていた。早いペースでビール10杯以上と赤ワインを数杯飲んでいたので相当酔っているらしく、身体は若干ふらつきが見られていた。
「丸ちゃ~ん、あの高級車に乗せてくれるのぉ~?うれしいなぁ~。」
石家先生は真っ赤なクシャクシャ笑顔で言いながらふらついた足どりで近づいてきた。ほのかにアルコール臭が漂っていた。
「あ、はい。い、今入り口まで車を回しますね。」
私は急いでホテルの受付に寄ってクロークからコートを受け取り、肌を突き刺す冷たい風が吹いている中、小走りで駐車場へ向かった。車に乗り込み、ホテル入り口前へ向かった。入り口前には
松田さん、喜屋武教授と真っ赤なクシャクシャ顔をして目が座っている石家先生が立っていた。