18:00に石家先生と病院裏にある研修医や独身の医師が使用している寮の前で待ち合わせをすることになっていた。車のハンドルを握りしめながら、これから始まる石家先生との時間をどう楽しく過ごしていこうか、頭の中でシミュレーションをしていた。車内では、リラックスをするためにお気に入りのJ-ポップを流していたが、頭の中でシミュレーションをしているのに夢中になっていて曲が頭に入らなかった。そうこうしているうちにフロントガラスから病院の建物が見えてきた。私の緊張感と胸の鼓動が更に強くなった。病院敷地内を通過して建物の裏にある医師用の寮の前に近づくと、道沿いにある電話ボックスの横に立っている石家先生の姿が見えた。
「あっ……先生だ……」
石家先生は、赤いダウンジャケットにチノパンツ、白いスニーカーといった格好をしており、穏やかな表情で電話ボックスの右隣りに立って待っていた。石家先生の姿が見えた途端、私の緊張は最高潮となり、胸のドキドキ鼓動が更に強くなった。
(先生、私との約束をちゃんと覚えてくれていたんだ……。)
私は電話ボックス横に車を停めて降りた。
「先生、忙しい中ありがとうございます!もしかして……結構待ちました?」
「いいや、大丈夫だよ。僕もさっき来たところだから。これ丸ちゃんの車?」
「あ、はい。」
「すごいね!噂には聞いていたけど、いい車に乗っているんだねぇ~。いいなぁ~。」
石家先生は「すっげえ~!」と言いながら私の車をぐるっと一周した。
「あ、ありがとうございます!じゃあ、どうぞ」
私は助手席側のドアを開けた。
「えっ、いいの?お酒飲みにに行くんなら、タクシーとかの方がいいんじゃない?丸ちゃん車運転するとお酒飲めなくなっちゃうんじゃない?」
「大丈夫です!それに、私そんなにお酒飲めないし、あ、あとその場の雰囲気で酔えるんで!さ、行きましょ!」
私はとにかく先生と一緒の時間を過ごしたのと、タクシーを呼ぶのが面倒くさいのもあって訳わからないことを言ってしまった。言った後ちょっと恥ずかしくなった。
「じゃあ行くか!」
石家先生は穏やかな笑顔で長い脚を挙げながら助手席に乗り込んだ。この日私は初めて父親と兄以外の男性を自分の車の助手席に乗せた。
「やっぱり四駆はいいよねぇ~。車高があるから乗っていて気持ちいいね~。」
石家先生は助手席に乗った途端、車内をグルグルと見回しながらやや興奮気味に言ってきた。
「そうですね……」
「この車って、あんまり道で走っているのを見かけないよね。スゴイなぁ~。幾らしたの?」
「〇○○万円です。」
「やっぱりそのくらいはするよね~。丸ちゃんって車好きなの?」
「いや、それほど好きというわけではないんですけど……前は中古の普通車に乗っていたんです。でも今四駆の車が流行っているでしょ?自分も乗ってみたいなぁ~と思って。いろいろ見て回ってこの車は見た目がなんかカッコいいし、あんまり見かけない車だから選んだんです。」
私はハンドルを回しながら得意げにペラペラと喋った。
「へぇ~そうなんだ~。こういう車に乗っているから丸ちゃんは車通なのかなぁと思ったよ。」
「実は違うんですよねぇ~。」
車はT市とS市の境目あたりにある和風の居酒屋へ向かった。ここの居酒屋は高校時代の親友である佳子とよく飲み食いに行ったり、看護学校時代に臨床実習終了の打ち上げで使用した行きつけの場所であった。全席座敷席でゆっくりと飲んだり食べたり話やすい場所なのでそこを選んだ。
「この車ってさぁ~どこで買ったの?あまり取り扱っているところって少ないんじゃない?」
「この車って燃費はどうなの?けっこういいの?」
「排気量は?」
彼はよほどこの車を気に入ったのだろう。居酒屋へ行くまでの約20分間、会話はほぼ車の話題であった。車の話題だろうが何だろうが、憧れの石家先生と私の愛車の中で二人きりで過ごしているこの時間はとてもワクワクして嬉しかった。石家先生の優しい笑顔と明るい会話のおかげで、緊張してガチガチだった私の石のような緊張感がゆっくりと溶けて和らいでくるのを感じていた。
「あっ……先生だ……」
石家先生は、赤いダウンジャケットにチノパンツ、白いスニーカーといった格好をしており、穏やかな表情で電話ボックスの右隣りに立って待っていた。石家先生の姿が見えた途端、私の緊張は最高潮となり、胸のドキドキ鼓動が更に強くなった。
(先生、私との約束をちゃんと覚えてくれていたんだ……。)
私は電話ボックス横に車を停めて降りた。
「先生、忙しい中ありがとうございます!もしかして……結構待ちました?」
「いいや、大丈夫だよ。僕もさっき来たところだから。これ丸ちゃんの車?」
「あ、はい。」
「すごいね!噂には聞いていたけど、いい車に乗っているんだねぇ~。いいなぁ~。」
石家先生は「すっげえ~!」と言いながら私の車をぐるっと一周した。
「あ、ありがとうございます!じゃあ、どうぞ」
私は助手席側のドアを開けた。
「えっ、いいの?お酒飲みにに行くんなら、タクシーとかの方がいいんじゃない?丸ちゃん車運転するとお酒飲めなくなっちゃうんじゃない?」
「大丈夫です!それに、私そんなにお酒飲めないし、あ、あとその場の雰囲気で酔えるんで!さ、行きましょ!」
私はとにかく先生と一緒の時間を過ごしたのと、タクシーを呼ぶのが面倒くさいのもあって訳わからないことを言ってしまった。言った後ちょっと恥ずかしくなった。
「じゃあ行くか!」
石家先生は穏やかな笑顔で長い脚を挙げながら助手席に乗り込んだ。この日私は初めて父親と兄以外の男性を自分の車の助手席に乗せた。
「やっぱり四駆はいいよねぇ~。車高があるから乗っていて気持ちいいね~。」
石家先生は助手席に乗った途端、車内をグルグルと見回しながらやや興奮気味に言ってきた。
「そうですね……」
「この車って、あんまり道で走っているのを見かけないよね。スゴイなぁ~。幾らしたの?」
「〇○○万円です。」
「やっぱりそのくらいはするよね~。丸ちゃんって車好きなの?」
「いや、それほど好きというわけではないんですけど……前は中古の普通車に乗っていたんです。でも今四駆の車が流行っているでしょ?自分も乗ってみたいなぁ~と思って。いろいろ見て回ってこの車は見た目がなんかカッコいいし、あんまり見かけない車だから選んだんです。」
私はハンドルを回しながら得意げにペラペラと喋った。
「へぇ~そうなんだ~。こういう車に乗っているから丸ちゃんは車通なのかなぁと思ったよ。」
「実は違うんですよねぇ~。」
車はT市とS市の境目あたりにある和風の居酒屋へ向かった。ここの居酒屋は高校時代の親友である佳子とよく飲み食いに行ったり、看護学校時代に臨床実習終了の打ち上げで使用した行きつけの場所であった。全席座敷席でゆっくりと飲んだり食べたり話やすい場所なのでそこを選んだ。
「この車ってさぁ~どこで買ったの?あまり取り扱っているところって少ないんじゃない?」
「この車って燃費はどうなの?けっこういいの?」
「排気量は?」
彼はよほどこの車を気に入ったのだろう。居酒屋へ行くまでの約20分間、会話はほぼ車の話題であった。車の話題だろうが何だろうが、憧れの石家先生と私の愛車の中で二人きりで過ごしているこの時間はとてもワクワクして嬉しかった。石家先生の優しい笑顔と明るい会話のおかげで、緊張してガチガチだった私の石のような緊張感がゆっくりと溶けて和らいでくるのを感じていた。