バカ恋ばなし

遂に約束の日曜日を迎えた。私は昨晩の興奮から眠りにつくのが遅かったせいか、午前中は11：00過ぎまでグーグー寝ていた。
「愛子！いつまで寝てんの！いい加減起きなさい！」
1階から母親の甲高い声が響いた。
「うわ……もうこんな時間だ……」
私はムクっとゆっくりベッドから起きた。起きた途端に肩から背中にかけて冷たい空気を感じた。
「う～寒っ。」
私はゆっくりとベッドから足を出した。足先から太ももにかけて冷たい空気を感じたので両足を寄せてスリスリと何回か摺り寄せた後、ゆっくり立ち上がってパジャマ姿で1階に降りた。
「おはよ……」
「おそよ～。ちょっと～寝すぎじゃない？休みなら少しは手伝ってほしいわね。」
1階に降りると母親は台所で昼食の準備をしていた。父親は居間でリクライニングチェアーに腰かけ厚手の本を熟読していた。
「ごめん……。あっ、今日夕方友達と出かけるから晩御飯いらない。」
私は目をこすりながら台所でそそくさと昼食を作っている母親の背中に向かって言った。
「えっ、そうなの？友達って？」
「あ、佳子ちゃんと。T市で食事に行ってくる。」
「そうなんだ～。明日仕事でしょ？早く帰ってきなさいよ～。」
「うん……」
私はボーっとしながら洗面所に行き髪の毛をブラシでといて整え、冷たい水で顔を洗った。冷たい水が刺激となってシャキッと覚めてきた。そのとたんに少しずつ緊張感がジワジワと出てきた。
「今日は先生と二人きりで飲みに行く約束をした日だ……」
鏡に映る自分の濡れた顔を見てふと呟いた。そうなのだ！今日は約束のあの日なのだ！
母が作ってくれたお昼ご飯をペロリと食べ終わってから、私は2階に上がりお出かけの準備を始めた。この日のために百貨店で購入したワインレッドのニットワンピーズと黒タイツに着替えた。耳には最近開けたばかりのピアスホールに金色の小さな球のついたピアスを付けた。洗面所に行き、念入りに髪の毛をブラッシングした。キレイにカットしたシャギーを見せるためにあえてゴムやバレッタで束ねず、そのまま髪の毛を下ろした。時計は１４：００を回っていて、外出するにはまだまだ時間があった。私は時間つぶしに居間にへ行き、両親と一緒にテレビドラマを見ていた。でも微かな緊張感が心の中を駆け巡っているせいか、テレビドラマを観てもちっとも集中できず、ストーリーも頭に入らなかった。ボーっとテレビを観ているうちに時間は１７：００を回った。私は2階に上がり、自室のクローゼットからグレーのピーコートを取り出して羽織り、茶色の革製のポシェットを左肩にかけた。
「じゃあ、行ってきま～す。」
玄関で黒い編み上げブーツを履いて玄関を出た。外は既に暗く、冷たい外気が両下肢を突き刺していった。
「よし！行くぞ！」
私は車に乗り込み、エンジンのスロットルを回した。緊張感がだんだん強くなり、胸がドキドキと高鳴り始めた。