(いたいた!譲二君。)

さあ!これから私の『ワンダフルタイム』の始まりだ!私は、佳子、清子と談笑し

ながら横目で譲二君を見つつさりげなく(ほぼ強引に)譲二君の背後まで近づいて

いった。

(よし!後ろ位置ゲットした!)

私はニヤニヤした顔を隠し切れずに譲二君の後ろに並んで電車を待った。

背が高くて(おそらく180㎝くらいだろう)細身だけど意外とガッシリとした肩

幅と大きな学ランの背中を後ろから眺めるだけでも嬉しくてドキドキものだが、実

はそれだけでは満足いかない!ここからが“山”なのだ!同じ車両に乗り込んで譲二

君のすぐ傍まで近づき、K駅からT駅までの間を移動する数分間の時間を彼の傍で過

ごす。それが私にとって朝の『ワンダフルタイム』なのだ!

電車が到着してドアが開いた瞬間、ホームから勢いよく人が乗り込んでいく。その

勢いを借りて私はそのまま譲二君の背後にくっつくようにして乗り込んだ。車両に

乗り込むと譲二君はクルリと背後にいる私の方に向き、私と譲二君はほぼ正面に向

かい合わせの体制になった。私の顔のすぐ正面には譲二君の学ランの胸元あたり、

第何番目かのボタンが見えた。

(やった!譲二君が目の前にいる!)

譲二君とすぐ傍でほぼ向かい合わせになり、譲二君の鼓動が聞こえてくるような感

じがした。