高校を卒業して1年半以上経った9月の残暑が続く中、私は偶然街中で譲二君を見か

けた。中学生時代まで住んでいたC市で毎年9月にお祭りがあり、私は一人で見に行

っていた。C市の駅前は祭りのお囃子の太鼓や笛が鳴り響き、山車や獅子がこれ見よ

がしに行き交っていた。私は祭りの賑やかな雰囲気と、出店でピンクや水色、レモ

ン色等着色料がバッチリ入ったチョコバナナや生クリームがたっぷり盛ってあるク

レープを買って食べながら歩くのが好きで、毎年必ず見に行っていた。その日も私

は出店でストロベリー味と称した濃厚ピンク色のチョコレートでコーティングされ

たチョコバナナをパリパリと食べながら、C駅前をぐるぐる歩いていた。山車が数台

集まっている場所に近づくと、多くの人込みの中に入り込んだので、チョコバナナ

が他の人の服に付かないように上手く避けながらゆっくりと進んでいくと、右側前

方に見たことある顔が視野に入った。譲二君だった。

「あっ……。」

私は少し驚いた。

(譲二君も祭りを見に来ていたの?誰か連れはいるのかな?一人で来ているのか

な?)

私は人込みにかくれつつ、こっそりと譲二君を見た。譲二君は一人ではなかった。

譲二君のすぐ前に背が高めで茶髪ボブカットの、スラリと華奢な感じの女の子がい

て、譲二君はうしろからその子をハグしながら山車を見ていたのだ。譲二君は穏や

かでとてもやさしい表情をしていた。よほど彼女のことが好きなんだろうという感

じが伝わっていた。

(まあ1年以上経ったし、その間に彼女が出来てもおかしくないよなあ……。)

私は半分以上食べかけていた濃厚ピンク色のチョコバナナが刺さった棒を右手でグ

ッと握りしめながら数秒間譲二君を見つめていた。胸の鼓動をドクンドクンと微か

に感じた。あまり長く見つめていたら譲二君に見つかって自分が気まずくなりそう

なので、私はその場を立ち去った。これが片想い真っ只中の高校2年~3年生のとき

に見たら想像つかないくらいとてつもない喪失感に襲われて、夜も眠れず、すべて

のことに集中力が欠けてしまうような脱力状態に陥っていただろう。しかし1年半も

経過した今はそれほど強い喪失感や衝撃は感じなかった。時が経過していくうち

に、私の中で譲二君への想いが少しずつ少しずつ薄れていったのだ。でも全く喪失

感がないわけではない。多少のショックは受けていたのだから。

これで、完全に私の初恋は消滅した。



この経験をもとに恋愛について学び、成長して堅実な恋愛をしていければいいの

に、学習能力がないのか、元々の性格なのか、恋愛を舐めているのか。勘違いな想

い込みは治らないまま、これから先も「おバカな恋愛」を繰り返すのであった。