「そろそろ出ようか。」

会計を済ませて(もちろん割り勘)私たちは店の外に出た。

「今日はありがとうね。」

「うん。」

「チョコパイ、食べてね。」

「うん。」

「では、元気でね。」

「うん。」

譲二君は微笑みながら頷き、くるりと駅前駐輪場に向かって歩いていった。私は、

譲二君の歩く後ろ姿を黙って見送っていた。私も同じ駐輪場に自転車を停めていた

のだが、何故か譲二君と一緒に歩いて行けなかった。恥ずかしさと、帰りまで一緒

にくっついていたら譲二君に嫌がられるかもしれない遠慮が生じていたからか。で

もここで一緒に駐輪場まで行けば、それだけ一緒の時間を持てて、もっと話ができ

たのに。または譲二君にK駅周辺を二人で歩こうと誘って一緒にいる時間を増やして

いけばいいのに。でもそのときの私はなぜかここで終わりにしてしまったのだ。多

分緊張していて声をかける勇気がなかったことや、沈黙が続いて心が重苦しい感じ

がずっとしていたため限界を感じたのか。それに1時間以上譲二君に引き留めるわけ

にはいかないと、遠慮の気持ちも出ていた。

結局譲二君からは告白どころか、沈黙続きで何も進展ないまま終わった。でも、ち

ゃんと会ってバレンタインの手作りチョコレートパイを直接譲二君へ手渡すことが

出来たのは大きな収穫だと思った。比呂ちゃんの占いは、「譲二君と二人で会うこ

とができた。バレンタインのチョコレートを渡すことができた。」という部分では

上手くいったので半分当たっていたが、もう半分の「告白される。」の部分は外れ

た。まさに占いの結果は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」であった。

(告白はなかったにせよこれで譲二君へ更に私の印象を付けることができたかな

と。多分私の気持ちにも気付いてくれたかな。いいや!これで良しにしよう!あた

しなりに頑張った!)

私は心の中で強く言い聞かせた。