(何を話そうか……そうだ!保育園と小学校1年生のとき一緒だったことは覚えてい

るかなあ。)

「あ、あの……私……実は春田君とはK保育園のとき年長のすずらん組とその後、K

第一小学校1年1組のとき同じクラスだったの。もしかして覚えていたかな?」

譲二君はえっ?といった表情になり、少し考えた後、微笑んだ表情で返事をした。

「そうだっけ……?覚えてない。」

(や、やっぱりね……そうだよね……。何せ10年以上前のことだからなあ……。)

「そ、そうだよねえ~。だ、大分昔のことだからねえ~。わ、私は久しぶりに春田

君に会ったとき思い出したんだあ。もしかして保育園と小学校時代に一緒だったか

なあと。そしたら家に写真があって、春田君と一緒に映っているのがあったの。保

育園の運動会で一緒に並んで立っていたの。」

「ふ~ん。そうなんだ……。」

「わ、私ね、小学校1年生までこっちに住んでいたんだけど、2年生からC市の方に

引っ越して中学校3年生まで住んでいて、高校に入ってからまたこっちに引っ越した

の。」

「ふ~ん。そうなんだ……。」

「…………。」

譲二君は微笑みつつ、大して興味がなさそうな感じで返事をしていた。その後言葉

が続かず、話が止まってしまった。沈黙が続く中、私は次の会話ネタを必死に探し

た。

(どうしよう……話が止まっちゃった。今度は何を話そうか……とりあえず部活の

ことを聞いてみるか。バスケ部だったよね。)

私は、譲二君がバスケット部に所属していたことを思い出した。以前比呂ちゃんの

お友達から情報を仕入れていたのだ。

「は、春田君って、部活はバスケ部なの?」

「うん……。」

「バスケは好きなの?バッシュ(バスケットシューズ)を履いているから。」

「うん……。」

「いつからバスケしているの?」

「中学から……。」

「そうなんだ……。」

「…………」

話がちっとも続かない。一言で終わってしまう。沈黙がまた続いた。

(どうしよう……話を続けなきゃ……これじゃ間が持たない。)

「バスケはまだこれからも続けるの?」

「もう引退した。」

「そ、そうなんだ。」

「…………」

やっぱり話が続かない。譲二君自身が元々あまり話をしないのもあるからか。憧れ

の人と一緒にいるのに沈黙が続くことで心が重苦しくなってくる。適当な話題が見

当たらない。

(どうしよう……そうだ!文化祭のときのツーショット写真のお礼を言わなき

ゃ。)

「去年春田君の高校の文化祭に遊びに行ったでしょ。」

「ああ……。」

「あのとき一緒に写真撮ってくれてありがとう。」

「ああ……どうも。」

「縁日の出し物は誰のアイデアなの?」

「ああ……あれね……クラスの女子たちが決めた。」

「あ、そうなんだ……。」

「…………」

文化祭の話題も続かない。喫茶店に入ってからずっと、私から話題を出しており、

譲二君からは話題を出してこない。こちらから聞いてきたことに対して一言ずつ応

えるだけだ。譲二君の返事があまりにもシンプルなので沈黙している時間が長くな

り、私は一層心苦しさを感じていた。