高校生活も残り少なくなってきた2月、決意を実行に移すべく準備に入った。恋愛の

一大イベント『バレンタインデー』で、譲二君へ本命チョコレートを渡すのだ!チ

ョコレートは当然手作りと決めていた。手作りのものを渡すことで家庭的で女性ら

しい部分を譲二君へアピールするためだ。本当はお菓子作りなんて小学6年生の時に

焦げてパサパサしたクッキーを作ってしまい、1歳年上の兄から

「うわっ、クッソマズっ!お前よくこんなの作ったよな。もう菓子作りしない方が

いいんじゃねぇの。」

と、散々なことを言われてしまい、それ以来ほとんどしていないのに……。イイ格

好を見せつけようと何ともイヤらしい考えだが、そんなことはお構いなしであっ

た。譲二君に良いところをアピールしたい!好かれたい!ただそれだけだった。

さて、チョコレートだが、何を作ろうか……。頭を悩ましていたときに、そういえ

ばいつしか下校途中に立ち寄った本屋で女子高生向けのファッション雑誌を立ち読

みした際、バレンタインデー特集として幾つかのチョコレート菓子の作り方が掲載

されていたのを思い出した。

私は下校途中で再度本屋に向かい、その女子高生向け雑誌を探した。雑誌を見つけ

るとページをめくり、バレンタインデー特集を探した。チョコレート菓子つくりの

部分を確認してから、雑誌を持って会計カウンターに向かった。帰宅後、早速自室

で購入した雑誌のバレンタインデー特集にあるチョコレート菓子作りの部分のペー

ジをペラペラ捲り舐めまわすように見た。

「どれも美味しそうで可愛いなあ。」

幾つかのページを見ていてそのうちの1ページに目が止まった。

「あ、これ美味しそう……。よし!これにするか!」

それはハート型のチョコレートパイが5個ピンクの可愛い丸型の箱に入ってラッピン

グされている写真が掲載されたページだった。私は何度も写真とレシピを見返し

た。パイの焼き色がきつね色で美味しそうだしハート型で可愛いらしい。ラッピン

グの仕方から可愛さを尚一層際立たたせていた。そしてレシピを見て自分でも作れ

そうだと思った。(まあまあ考えが甘かったが。)

「この可愛いハートのチョコパイを作って譲二のハートを掴んでやる!」