「とにかく近くまで行ってみるか。」

私は、とにかく譲二君の近くに行ってみようと思い、恐る恐る譲二君のいるヨーヨ

ー釣りのところへ近づいてみた。その途中でなんと譲二君と目が合ってしまった!

(あっ!)

私は胸の中がドキンと鳴ったのを感じた。

譲二君は私たちを見て「あっ」と言わんばかりの顔をしていた。毎朝同じ車両に乗

っている面々だと気づいたのだろう。目が合ったとき、私は思わず「どうも」と、

か細い声で譲二君に挨拶をした。

「ああ、どうも。」

譲二君も笑顔で挨拶を交わしてきた。この瞬間、私の中の何かが動いた。今話かけ

るチャンスだ!私はめちゃめちゃ頬の筋肉を挙げたニヤニヤ顔で話しかけた。

「あのー……いつも朝一緒の電車に乗っている者ですう……。」

「ああ……そうだね。」

譲二君は少し驚きつつも爽やかな笑顔で言葉少なく返事をしてくれた。

(やった!私のことは覚えてくれていたんだ!!やったあ!やったあ!)

とにかく譲二君に自分の存在を知ってくれていたことが嬉しかった。毎朝の努力が

報われた瞬間だ。嬉しさから、私の緊張は更に高まると同時に、パアッと心が明る

くなるのを感じた。私は更に話しかけた。

「覚えていてくれたんだあ……。よかった!今日文化祭があると聞いたんで、来ち

ゃった。」

話ながら私の体温は高くなり、頬が火照るのを感じた。

「ああ……そうなんだ……。」

譲二君は変わらず爽やかな笑顔とは対照的にボソっとした口調で応えてくれた。そ

のとき1号君が譲二君の隣にきてニヤニヤしながら肘で譲二君をグイグイと押してい

た。譲二君は笑いながら「何だよおー」と言わんばかりに肘で一号君を押し返して

いた。