大和は僕の足を気にして走り回っていた。僕が走れないぶん、あちこち先回りして探してくれる。

 心配してくれるのが、申し訳なくもあり、ちょっとだけ嬉しい。弟がいたらこんな感じだろうか。

「……恭ちゃん、恭ちゃん。紗里いた! あの橋の真ん中らへんでボーっと川を見てる!」

「そっか、サンキューな」

 右足を引きずりながら橋の欄干に手を置いた。

 ちょうど一週間前の夜、紗里を尾行して歩いた道路橋だ。

「大和は帰ってていいよ。ちゃんと紗里に謝ったら一緒に帰るから」

「……うん、分かった!」

 踵を返して身軽に走る背中を見送り、ヒョコヒョコと足を進めた。

 夕陽に照らされた橋の中ほどが見えた。大和が言うように、紗里は暗い表情で川を見つめていた。

 右足に痛みが出ないよう気を付けながら近付くと、やがて紗里もこちらの存在に気が付いた。

「……恭ちゃん、足っ」

 紗里が僕の方へと駆け寄り、これ以上歩くことを止めた。

 前に突き出した両手を下ろし、「なんで?」と尋ねられる。

「なんでわざわざ出てきたの?」

「……あの、さ。ごめん、って謝ろうと思って」

「え」

 紗里は困惑した様子で眉を下げた。