「紗里に……今一番気になっていることをちゃんと言葉にして尋ねた?」

「……」

 今、一番気になっていること……?

 僕は無言で首を横に振る。

「大和は知ってるんだよな? 紗里に妙な能力(ちから)があること」

 言葉にするのを(はばか)ったのか、大和はただ無言で顎を引いた。

 壁に手をつき、鈍い動作で立ち上がる。

「紗里のところに行ってくる」

「っでも、恭ちゃん足!」

「別に引きずっては歩けるよ、ちゃんと固定してもらったし」

「てか、紗里がどこにいるのか知らないじゃん!」

「そんなの、どっかその辺りでしょげてんだろ」

「待って待って、今オレから電話するからっ!」

 え……?

 洋室の扉の前で僕を止めた大和は、慌てながらもポケットから携帯を取り出した。見るからにキッズケータイだ。

 耳に当てた大和を静かに待つこと、数秒。着信音は二階の部屋から流れてくる。

 あいつ、スマホ置きっぱなしじゃん!

「やっぱり近所だけでも見てくる」

「じ、じゃあオレも付いて行くから」

 外に出るとだいぶん日が暮れかかっていて、夕陽が届かない路地なんかは既に薄暗くなっていた。