紗代子叔母さんは好きだ。意図的にサリーちゃんを避けていたので、会うのはかなり久しぶりになるが。気さくな雰囲気が僕をリラックスさせてくれる。

「誰?」

 玄関から続く廊下の先に、男の子が立っていた。

 小学生には違いないが、高学年だろうか。細長い体つきのひょろこい男子が僕を見て眉を寄せた。

「……あ」

 僕は自身の記憶を辿り、彼の事を思い出していた。当時、僕が八歳だった頃。サリーちゃんには幼児の弟がいた。まだ二歳か三歳だった気がする。

 名前は確か……。

大和(やまと)はまだ三歳だったから覚えてないかもしれないけど……従兄弟の恭介お兄ちゃんよ?」

 紗代子叔母さんが彼に言い、母が「よろしくね、大和くん」と柔らかな笑みを浮かべた。

 そうだ、大和(やまと)だ。

 あの頃サリーちゃんは、やっくんと呼んでいた気がする。すっかり忘れていた。

 大和は僕に近付き、遠慮のない目でしげしげと眺めたあと、「恭介って……恭ちゃん?」と尋ねてきた。

「え……」

「あら、大和。覚えてるの?」

 目を丸くする叔母さんを見つめ、大和はふるふると首を振る。