「わぁ超夕焼けすげぇ。
ひらけたとこで写真撮るべ」
そして、更地まで歩いた。
「やっぱここは誰も来ないな。なんとなく大冒険が始まる感じがするわ」
隣に人がいればはっきり聞こえるぐらいの声量で言う。
そして写真を一枚とる。
自分の画力では到底描けなそうな藍とオレンジのグラデーションの空に
細い筆で薄く描いたような雲がのっかって、
広い大地にうつる夕方の陽の光と雲の影とのきれいな境界線が、自分から言葉と意識を持って行ってしまうようだ。
そして、一言「綺麗」とい
う言葉を返してくれた。
この景色を前に私は「綺麗」以外の言葉を発することが出来なくなってしまった。
そして突然帰ってきた言葉と意識を出迎え、我に返った。
「帰るか。うん。そうしよう。」
スマホは17:35を表示している。
もう日の入間近。
「あーなんか、急に夜の静かな道を歩いたら心身が清められる気がしてきた」
夕飯を食べたら少しウォーキングをするといって外に出ようと思いながら、家に帰った。
「帰ってくんのわりと早かったな」
母親にそう言われた。
「今日はたまたま放課後活動に当たらなかったんだ。」
「それはいいんだけど、あんたそろそろ友達の一人や二人作りなさいよ?
もう高校二年生でしょ?」
「まぁなんとかやるよ。」
「いつもそれだけ言って結局作らないで帰ってくるでしょ毎日。」
「友達は自然にできた人じゃないといても気まずいだけよっw」
「あっそう、あんたがそれでいいならいいんだけどね。あと、独り言の癖やめなさいw傍から見たら変人だよ。」
「そういえば、突然話が変わるんだけどさ、ちょっとご飯食べ終わったら歩いてこようかなって。この辺ちょっと歩いたら線路だからちょうどいいかなーなんて」
「急に話が変わったね。まぁいいわ。いってらっしゃい。」
なんとなく話がそれて助かった。
夕飯を食べて、ちょっと十分ぐらい適当に過ごしたら歩きに行こう。
ご飯を食べた後すぐに動くのは流石にキツい。
「なぁ~んか体重増えた気がするんだよなぁ」
「あんたさっきご飯食べたばっかでしょw。朝起きたらすぐ軽くなってる気がするって言いだすんだからw」
「あー、そっか。」
母親は笑いながら言う。
「それに男児なんだから体重は増えるものよ。」
「はぁ......」
なんとなく歩きに行くことにした。