「こんなところにコンビニ...
前までクリーニングじゃなかったか?w」
ちょっと大きめの都市の郊外の端、首都じゃないけど。道路の舗装もかなり前にされたので最後、少し歩いていくだけで更地。木も割と生えてる。街頭もかなり少ない。季節によってはカエルの鳴き声が響くようなところ。
「ここ本当に札幌か?」
私は思わず口に出す。
傍から見たら変人だ。
「線路超えたらすぐ街って感じするのになぁ本州の人にいきなりここどこだ!って見せても札幌って言える人あまりいないだろうな...」
でも前までクリーニングだった店がコンビニになっているのはこちら側としてはありがたいことだ。ここら辺はコンビニが少ない。
「失礼しまーす」と、私はボソッと言ってコンビニに入る。
「おー、レジ横にカウンターがあるではないか。なんか飲んで帰ろっかな。」
またボソッと呟く。
流石に入ったのに何も買わずに帰るのはひどい気がするのでメニューを見てみることにした。
「カフェモカ...にするか。」
レジですぐに会計を済ませようとお金を握り向かう。
「確かイートインって軽減税率かからないんだよねwなんも食べるわけじゃないけど」
さらにボソッと呟き、カフェモカを買った。
「正直...キリマンジャロとか言われても味わかんねぇんよなぁ。甘くしたら尚更。」
どうでもいいことまで呟き少し背筋を伸ばして上品な感じで飲む。「よくわかんないけどコーヒー系と紅茶は上品に飲むイメージ...」と一口啜ってからぼやく。
「そうそう、だからこの面接みたいな感じの座りかたも仕方ない...っと。」
面接へのなんとなくのイメージを使って一人で特に誰にも届くことのない言い訳を壁に向かって話す。
「はぁ...」とため息をついてまた一口啜る。
なんとなく中毒性のある苦味とそれを緩和する甘味が疲れを飛ばす。
この苦味と甘味、中毒性のある組み合わせから、きっと私は美味しいという言葉を生成したのだろう。そして全て飲める限り飲み干し、「ごちそうさまでした。」と小声で呟く。
ゴミを捨ててイートインを去った。
「わぁ超夕焼けすげぇ。
ひらけたとこで写真撮るべ」
そして、更地まで歩いた。
「やっぱここは誰も来ないな。なんとなく大冒険が始まる感じがするわ」
隣に人がいればはっきり聞こえるぐらいの声量で言う。
そして写真を一枚とる。
自分の画力では到底描けなそうな藍とオレンジのグラデーションの空に
細い筆で薄く描いたような雲がのっかって、
広い大地にうつる夕方の陽の光と雲の影とのきれいな境界線が、自分から言葉と意識を持って行ってしまうようだ。
そして、一言「綺麗」とい
う言葉を返してくれた。
この景色を前に私は「綺麗」以外の言葉を発することが出来なくなってしまった。
そして突然帰ってきた言葉と意識を出迎え、我に返った。
「帰るか。うん。そうしよう。」
スマホは17:35を表示している。
もう日の入間近。
「あーなんか、急に夜の静かな道を歩いたら心身が清められる気がしてきた」
夕飯を食べたら少しウォーキングをするといって外に出ようと思いながら、家に帰った。
「帰ってくんのわりと早かったな」
母親にそう言われた。
「今日はたまたま放課後活動に当たらなかったんだ。」
「それはいいんだけど、あんたそろそろ友達の一人や二人作りなさいよ?
もう高校二年生でしょ?」
「まぁなんとかやるよ。」
「いつもそれだけ言って結局作らないで帰ってくるでしょ毎日。」
「友達は自然にできた人じゃないといても気まずいだけよっw」
「あっそう、あんたがそれでいいならいいんだけどね。あと、独り言の癖やめなさいw傍から見たら変人だよ。」
「そういえば、突然話が変わるんだけどさ、ちょっとご飯食べ終わったら歩いてこようかなって。この辺ちょっと歩いたら線路だからちょうどいいかなーなんて」
「急に話が変わったね。まぁいいわ。いってらっしゃい。」
なんとなく話がそれて助かった。
夕飯を食べて、ちょっと十分ぐらい適当に過ごしたら歩きに行こう。
ご飯を食べた後すぐに動くのは流石にキツい。
「なぁ~んか体重増えた気がするんだよなぁ」
「あんたさっきご飯食べたばっかでしょw。朝起きたらすぐ軽くなってる気がするって言いだすんだからw」
「あー、そっか。」
母親は笑いながら言う。
「それに男児なんだから体重は増えるものよ。」
「はぁ......」
なんとなく歩きに行くことにした。
「私は私。」
ぶつぶつ言ってる。
「あー、なんか唐突にコンビニおにぎりが食いたくなった......」
線路を超えてから少し歩いたらすぐ町みたいな感じになってるので、
コンビニはかなりあるが、私は今日見つけたコンビニのおにぎりが食べたくなった。
近いんだもん。
あと単純に興味がある。
「失礼しまーす。」
また呟いて、入店する。
「おにぎりコーナーは...っと、突き当りだな」
おにぎりとのり巻きがずらっと並んでいる。
「明太子ないかな」
...
なかったので「日高昆布」にした。
「ありがとうございましたー」
「あぁ、こちらこそありがとうございました~」
わりと若い店員の方に会釈をしながらコンビニを出た。
そして、更地に向かった。
実は、更地といってもちょっと金属の柵的なのが周りにあるので、
今度は夕焼けではなく夜景を眺めるようにして、柵に座っておにぎりを食べる。
「まるいち...」
ベリベリとはがす。
「まるに...」
スッと取る。
「まるさん...」
スッと取る。
...
「やってしまった。」
「まるさんのほうに半分ぐらいご飯ついてきたんだけどw」
おにぎりはかなり不格好になってしまった。
「まぁ、あるあるよ。私なりの食べ方をするにあたって、この程度の破け方はまぁよしとする。」
そして、『私なりの食べ方』をはじめる。
まずてっぺんをたべる。
海苔の破ける音がすさまじくよい。
そして破けた方を食べる。
更にもう半分を食べる。
もちろん中の具を食べないように。
最後に中の具が入った核の部分をほおばる。
幸福感がすごい。
あと日高昆布美味しい。
「歩くって言った割には家の近くのコンビニでおにぎり買って夜景見ながら座って食べるって、相当やべぇやつだなこりゃ。」
でも夜景がきれいだ。
正直ずっと見ていたい。
「まぁいいや。座っとこ。」
ふとおもいだした。
「そういえば、ここから線路側にちょっと歩くとパン屋があるんだよな~。
んでそこの自販機にたい焼きが売ってるわけよ。250円ぐらいで。
...誰に説明してるんだ私は。まぁいいか。
...食ってみたいな...
小遣いは割とあるし、マジで食べたいな
でもここまでくると食べすぎなような気もするしなぁ~」
明日学校帰りに買うことにした。
「もう帰ろっかな。なんとなく。」
ということで、三十分ぐらいしか外にいなかったけど帰ることにした。
実はかれこれもう七時ぐらい。
「なーんか夜って誰も歩いてないから落ち着くんだよね~w」
これが深夜テンションってやつだ。
なんか、何もないのに笑えてくる。
歩いてすぐのところに、自販機があった。
「百円統一系だな。ありがてぇ。」
この自販機はとにかく財布にやさしい。
ただ、だいたいエナドリだけ200円だ。
エナドリ飲んでみたいなぁ
...買うか。
なんだか見てるだけで魔物に切り裂かれてしまいそうなデザインの缶を購入。
「今日は少し夜更かししたいからな。」
途中、野良のにゃんこが左の茂みから私の目の前を通って右側の茂みへと突進していった。
何がしたかったのか正直気になったが、面倒だったので家に直行した。
「野良のにゃんこなんて探してもなかなか見つかんないのに普段どこにいるんだろうな」
なんていう独り言を右の茂みにつぶやきながら......
「おかえり、はやかったね。」
「んまぁね。あと、もう部屋にこもっておくわ。そしてそのまま寝るから」
「はいはい、おやすみー。」
と、足早に階段を駆け上がり、二階の端にある自分の部屋に入り、学校に持って行っている重いリュックを扉に押し付けた。
そして勉強机に向かって椅子に座り、エナドリを置いてやった。
正直、私にとってエナジードリンクというのは体に悪いというイメージしかない。
ちょっと一口飲むまでに勇気が必要そうだ。
少し間をおいて、流石に飲もうと思い缶を握る。
周りに水滴がついていて滑り落ちてしまいそうだ。
しかも缶ジュースなんてめったに飲まないのでプルタブを開けるところから苦戦する。
「ってか、改めてみるとっ...パッケージこわっ...くねっ?」
開栓に力を使っている今であっても独り言は欠かさない。
黒い缶に緑の爪痕。さらにかなり個性的な字体で商品名を記載している。
やっと開いたかと思うと力が抜けて缶を勢いよく吹っ飛ばした。
「あぁ...w」と思ったが、床に落ちても水滴の一つも零れていない...?
...
...まだ開いてなかった。
「こんな茶番してる暇はねぇ」
「なに落としたー?」と、一回から母の声が聞こえた。
「あー、スマホ落とした―」と返事を返した。
「壊れてないならよし」といって、遠のいていく足音が聞こえた。
そして、エナドリの開栓を続ける。
「開栓したい私、バーサス、開栓されたくないエナジードリンク...しぶとい奴め」
長い戦いになりそうだと思っていたが、さっきの落下の衝撃で簡単に開いた。
私は勝利の余韻に浸りつつエナドリを啜る。
「んー......」
正直私の口には合わなかった。
「何本も進んで飲もうとは思わないかも......」
ただ私はそれのおかげで飲みすぎてしまわないようにできているのだと自分を納得させて飲み続けた。
「なんだか今日はオールできる気がしてきたので宿題を始めることにしましょ」
と、宣言して宿題に手を付け始めた。夜更かししたかったので丁度良いだろう。
いやぁ、割と勉強って机に向かうまでがめんどいのよ。
机に向かっちゃえば勉強なんてすぐですよすぐ。
私は今、黙々と勉強している。
これはきっと将来仕事での忍耐力をさずけてくれる糧となり生贄となり...?
自分でも何言ってるかわからなくなったので勉強をしよう。
「あぁっと...これで最後か。おー、課題終了!w」
何だかあっさり終わった気がする。宿題が少ないってのもあるけど。
勉強が終わったら急に達成感と退屈が襲ってくる。
「あ、スマホ鳴った。」
動画投稿サイトの通知だ。適当な広告とともに気に入っている曲を聴きに行く。
『〇〇〇さんが、「〇〇〇〇.feat_〇〇〇」を投稿しました。』
丁度好きなアーティストの新曲だ。
達成感かには褒美という名の新曲視聴を。
退屈はすぐ吹き飛ぶ。
どうやったらこんな曲を思いつくんだろうか。
私は割と直感でふと思いついたときに描かれているものなんだと勝手に思っている。
天の才に恵まれた人なんだと勝手に思っている。
努力してる人に失礼だけどね。
ふと概要欄を見る。
『ついにこの楽曲が小説化しました!!詳しくはこちら......』
なんと、私が気に入っている曲が小説化しているではありませんか。
この際久しぶりに参考書以外に文庫本を買ってみようかな。
「明日は帰りに本買ってたい焼き買って帰ろう。」
そして突然睡魔に襲われる。
「くはぁ、ねみぃ。エナドリってホントに元気の前借りなのかな。」
多分エナドリのせいではないが。
私はすぐ布団に入る。
「今日はたい焼きと本を買おう。」
日付が変わって昼間の学校。
母親には友達作れって言われる。
容姿からなのか口調からなのか何もかもからなのかわからないが誰も寄っては来ない。
だからそんなこと気にせずに弁当食べる。
「どーせなら新札まで行って本買いたいなぁ」
特に仕事もないし。
そこからの記憶はあまりない。
特に記憶に残るようなことも残すべきなこともやってない。
ただただ時間と授業が流れて行ってあっという間に帰る時間だ。
あと十分ぐらいあるけど。
途中転校生とか聞こえてたっけなぁ......
気のせいかなぁ......
「だるい。まじだるい。」
ぐったりしている私。
すると突然前の席から声をかけられた。
「すみません、僕、今日から転校してきたものです。突然話しかけてしまって申し訳ないです。話せそうな人があなたぐらいしかいなくて。」
今日来た男子転校生だ。
確かに、周りはいつもの面子が集まってわいわいしてる。
「あー、はいはい、転校生さん。ごめん、寝てたか何かであなたの記憶が一切ないわw」
出来れば適当に話を終わらせてしまいたかった。本が読みたい。
「あぁ、そうでしたか。」
って返された。
でも母親の話を思い出したので少し話を続けてみる。
私はおもだるい体を起こして話す。
さっきまで目を瞑っていたから視界がぼやけている。
「ねむくない?私はバチクソ眠い。昨日エナドリに手ぇだしちまったからだよ絶対。」
と、少し馴れ馴れしい態度で話してみた。
というか、もうそろそろ帰る時間だ。
「なんか最初ぐったりしてた時は女性かと思いました。話してみると声も低くてギャップがすごくて印象的です。」
私が女っぽい髪型して悪いか?そうですよ、私は男ですよ!
こういうときだけは私は独り言を言わない。
そして、視界のぼやけが薄れてゆく。
転校生君の顔でも覚えてから帰るかな。
丁度チャイムが鳴るまで一分。
「よし、もう時間ないから君の顔だけ覚えて帰るね」
と、軽い気持ちで男子転校生の顔を見る。
......正直驚いた。
顔の形が整っていてパーツもよい方だ。
って、どこに着目しているのだ私は。
そんなところ見なくても顔は覚えられるだろうが。
うわぁもうなんかそれ以外考えられなくなってきた。
イケメンだなぁ。よく誰も話しかけないな。
もしかしてほんとうはメチャクチャ不良だったりする?
私はなっているチャイムに気付かずに呆然としていた。
あまりにも衝撃的な話だ。
そして本当に暇しない世界だ。