『彰のため』
たったそれだけだった。でも、俺はだいたい意味が理解できた。
彰は楓の絵が好きだった。というより、現在進行形で好きだ。楓が一作品を描き終えると必ず俺たちに見せてきた。毎回、彰は笑顔で「相変わらず上手いな」と言う。俺もそれに乗っかり同じことを言う。彰はいつも笑顔だった訳では無い。彰が笑顔になるのは楓の絵を見た時と俺のバスケのプレーを見たり、自分がプレーをしている時だ。
「じゃあ、ここまでで大丈夫だから」
昨日と同様に佐伯の家の前から一歩も歩いてないが、俺にそう言ったが、今日は楓と彰のおばあちゃんに頼みがあるので首を横に振って否定をした。
「いや、ちょっと朱里さんに用事がある」
「おばあちゃんに?」
「…というか三人に提案がある」
「え?三人っておばあちゃんと私と彰?」
俺は縦に首を振った。
「…わかった。」
そう言って楓は今の自分の家へ歩き始めた。そして、俺もそれについて行った。朱里さんの家は佐伯の家から十分程で着いた。