「来てくれるとは思わなかった。」
楓は俺を部屋に入れるとすぐにベッドに入ってそう言った。
「あ、うん。流石にほっとけなかったというか」
「そっか…わざわざありがとう」
「あ、これ買ってきたからあげる」
俺は来る途中、コンビニで買った物を机に並べた。
「ありがとう。お金は今度返すね。」
「いや、お金はいいよ」
お母さんから毎月貰っているお小遣いだけど使い道がほとんどないので貯金している。だから問題はなかったし、返してもらうような金額じゃなかった。
「あ、そういえば台所に俊の水筒がある。」
「わかった。帰りに取ってくよ」
とりあえず俺は楓の部屋の床に座った。
この部屋は元々、楓のために作られた部屋だった。というのも、楓達の祖父が亡くなって寂しくなった楓達の祖母は俺たちの家の近くに引越しをした。近くと言っても歩いて二十分くらいの場所だけど。そして楓達のおばあちゃんが一人で住むには広すぎるこの場所に楓の部屋、彰の部屋、そして俺の部屋まで作ってくれた。小学生の頃の休日や夏休みや冬休みなどはずっとここで過ごしていた。