「……なんでよ。なんで…。諦めさせてくれないの」
くるみの目から再び大粒の涙がこぼれていた。
「俺の親友が言ってたんだ。すぐに諦めようとするなって。だから、俺はくるみは諦めない。」
「……なんですか…それ。それ絶対、俊のことじゃないですか。」
「……そうだよ。だから、これを受け取って欲しい」
「………後悔しても知りませんからね。」
くるみは涙を袖で拭いてから笑った。その笑顔は俺が眠る前から変わらず可愛かった。
「後悔なんてしてない。俺の人生、後悔だらけかもしれない。でも、これだけは後悔してないって言える。」
「………なんですかそれ。」
くるみは再びクスッと笑ってくれた。
「いいってことで…いいのか?いや、待って。ちゃんと言うわ」
「…はい。ちゃんと言ってください」
「俺と…結婚してください。」
「…はい!」
『パチパチパチパチパチパチ』
『パチパチパチパチパチパチ』
誰もいない浜辺で拍手をする音が二つ聞こえた気がした。その音は俺にだけ聞こえていたわけではなかったみたいで、俺とくるみは顔を見合わせて笑った。