「……いない…のか？」
俺は念の為、もう一度インターホンを鳴らした。でも、やっぱり返事はなかった。
俺はふと、優大さんが言っていたことを思い出した。
『留守だった場合、近くの海の方にいるかもしれません』
俺は全力疾走で海の方へ向かった。息が出来なくなるくらい全力で。後半なんて足の感覚がまるでなかった。それから走り始めること十五分程で海に着いた。
海は俺が眠る前とほとんど変わっていなかった。それに今気づいたが、ここは俺らいつの日か行った水族館の帰りに寄った海だった。
やっぱり、日本は自然には手を出さなかったんだ。俺は少しだけ関心していると砂の上にレジャーシートをひいて体育座りをしている一人の女性が俺の視界に入った。俺はその後ろ姿だけで分かった。
「…くるみ」
俺はゆっくり近づいて、歩きながら深呼吸をした。
近づくとレジャーシートにはあと一人分のスペースがあった。まるで、俺に『座ってください』と言っているかのように。だから、俺はスっと隣に座った。
そしてくるみの方を恐る恐る向くと、くるみは居眠りをしていた。
