香織さんが車を駐車場に停めた。香織さんは特に何もしていなかったけど。
俺は車を降りて、貿易管理会社の敷地の中へと進んだ。香織さんは俺に気を遣ってここで待ってるらしい。
とりあえず進もうとした時、警備員みたいな人に止められたので、俺たちがここに来ることを許可されたことを伝えた。
「あの私たち一応さっき電話した者なんですけど」
すると二人の警備員は顔を見合わせてから、
「あ、もしかして川口彰様ですか?」
「えっと…はい、そうです。」
「そうでしたか。これは失礼します。ちょうどさっき連絡が入って、川口彰という男性が来たら通せと言われてますので。どうぞこちらへ」
俺たちはその警備員の人たちにいかにも社長室みたいな所へ案内された。
「えっと……お邪魔します」
一応挨拶をして中に入るとそこには四十代後半位の一人の男性が立ちながら窓の外を見ていた。俺たちが入ってきたことに気づくと俺たちの方へ歩み寄ってきた。
「初めまして。この会社を経営している川口と申します。」
え…?川口?いや、たまたまだよな…。
「俺と同じ苗字なんですね…。俺は川口彰と言います。」
「凄い偶然ですね…。とりあえず、例のものを持ってきますね。そもそもそれを見に来たんですよね。それにしても五十年前の手紙って…もしかしてあなたのおじいちゃんやおばあちゃんが向こうから流したんですかね」