「勉強…してるの。将来医者になって彰を助けたいから。でも、部屋が一緒だから気を遣わせちゃって…」
そういう事か。そういえば二人の部屋は横長の部屋を二人で使っている部屋だった。二人の部屋に最後に入ったのは小学生高学年だった。
そして、彰にはタイムリミットができた。
二人のお母さんが病気と診断されてから10年で亡くなってしまった。彰が部活をやめたのがちょうど１ヶ月前、遺伝性だとしたら約10年後、最低で何年後に彰がいなくなってしまうか分からない。それまでに楓は医者になり、彰を救おうとしてるのだ。
「俺は…何すれば…いいかな」
ボソッと声に出てしまっていた。その答えは自分で考えても出なかった。頭の悪い俺に何が出来るのだろうか。勉強でどれだけ頑張っても結果の残せなかった俺に彰のために何が出来るのだろうか。楓と会話をしながらずっとそんなことを考えていた。
「…彰のそばに…いてあげて」
ボソッと言った俺の言葉は楓に聞こえていたらしく俺に向かってそう言った。
「そばに…」
彰が病気だということを知ってしまった現在。俺は彰にどう接するべきだろうか。楓がおばあちゃんの家に帰ったあとの楓のいなくなったこの静かな部屋でずっと考えていた。