父は優しい声、そして笑顔を俺に向けた。
確かに父の言う通り、結婚は一年に一度の大イベントだ。
「お金…貸してほしいです。必ず返します。」
俺は改まった。きちんと頭を下げて父にお願いをした。父にお願いをしたのはバスケットシューズを初めて買ってもらった時以来だ。
すると父は無言で立ち上がり、どこかへ行ってすぐに戻ってきた。父の手にはボールペンと紙を持っていた。
「借用書だ。」
父は笑っていた。俺はそれを素直に受け取る。よく見るとただの白紙の紙だった。
俺はその紙にボールペンで借りる額を書こうとしたが、実際結婚式のお金がいくらかかるかなんて俺には分からなかった。
「ねぇ、結婚式っていくらぐらいかかるの?」
「うーん…そうだな。身内だけなら五十万あれば全然足りるぞ。それに、知り合いに結婚式場管理してる人いるから今度相談しておいてあげるよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ、お願いしようかな。でも待って、楓とも相談したいから」
もちろん俺が勝手に決めることではない。これは俺たち二人で決めることだ。