「なんだ…急に」
母は随分と酔ってしまっていて、ソファで横になってしまった。
「いや、ずっと言えてなかったから。別に隠してたつもりはなかったんだけど。」
「そのために大学に行ったんだろ?なら、自分のやりたいことをやればいいさ。俺と母さんがやるのはあくまで手助けだ。これからの人生は自分で決めて、自分で切り開いて行くものだよ」
俺の父親が初めて父親らしいことを言った気がした。
「だよね…」
俺は大学四年生の頃は、ただスポーツが好きだからという理由でスポーツトレーナーになろうと思っていたが、今もそうだ。スポーツが好きだからスポーツトレーナーになる。これは決して悪いことではないと思う。自分の好きなことが仕事に出来ればそれはいいことだ。
「よし。母さんを布団に運ぶから手伝ってくれ」
俺は缶ビールの中身をグイグイ飲み干してから父さんの指示通りに、母さんを寝室まで運んだ。
そして再び俺と父さんは食卓に座った。
「もしかして、ビール飲むの初めてか?」
俺が無自覚で少し苦そうな顔をしていたのだろう。父は心配そうに聞いてきた。