そして、改めて彰の病気が治って良かったと心から思った。一人になった途端、気が緩んだのか目から大粒の涙が出てしまった。
「良かった……本当に良かった………」
独り言が絶えなかった。自分でも分かる。本当に泣きたいのは彰や楓、そして二人のお父さんなのに。どうしても泣きたかった。あの日が再び戻ってくると思うとさらに涙が止まらなかった。自分でも止めることの出来ない程に。
あれから何時間経っただろうか。気がつくと、涙は止まっていて、俺はベッドに仰向けで寝転んでいた。
「はぁ…………俺も頑張らなきゃな」
大きなため息を吐いて気合いを入れた。
これからは楓と幸せな家庭を築き、そして彰とも幸せな日常が送れるように、今度は俺が努力をする。そう、心に誓った。
そんなことを考えているとポケットに入れていた携帯電話の音が鳴った。
「もしもし楓?」
『あ、俊ー。明日お父さんが家に来るようにって』
「え!?お父さんが?」
『うん。君にお父さんと呼ばれる筋合いはない!なんつって』
楓は電話の向こうで笑っていた。