「ちょっと…なんで知ってるのさ。」
「これに関しては彰くんから聞いたのよ」
彰のやつ…。何でもかんでも逐一報告しやがって。いや、いつかは言おうと思ってたことだ。
「まぁ、彰の言う通りだよ。言うの遅れた。ごめん」
俺が少し申し訳なさそうにしていると母はクスッと笑った。
「いいのよ。それより結婚式はいつあげるの?」
「それはおいおい決めるよ。まだ楓のお父さんに言えてないし…」
彰と楓のお父さんとはあれ以来会えてない。当たり前だ、向こうは主張で俺は九州にいたのだから。
「とりあえず、今日と明日は家にいるから」
俺はそれだけ伝え、自分の部屋へと去った。
「あら、寂しいわね…」
そんな母の声がちらっと聞こえたが、俺は構わず自分の部屋へ向かった。
久しぶりに入るその部屋はきちんと整理整頓がされており、懐かしいものが目に入った。
手に取ったのはいつの日か、楓から貰った海の絵だった。
「相変わらず上手いな。」
あの日と同じ感想だが改めていると、どこか寂しげな絵だった。