「海から近いんだね」
「うん。俺、海が好きなんだ。波の音だったり、砂の触り心地。海に反射した太陽も。」
中学の頃は別にそんなこと無かったけど、高校生活で何度も悩み、その度にここに来てはいつの間にか好きになっていた。
「初めて聞いた。もしかしてさ、私の中の俊の印象が中学で止まってるのかもね。」
楓は笑いながら俺にそう言った。そして、俺もそれに答えるように笑った。
「そうかもね」
そんな会話をしていると、俺が住んでいるマンションに到着した。
「随分と高そうなマンションに住んでるね」
「なんか、母さんと父さんがやってくれたんだけど、俺も最初見た時はびっくりだよ。」
俺達は地下に進み、俺のバイクの場所まで行ってバイクを地上に出した。
「ヘルメット二つ持ってるの？」
「あーうん。彰の分だよ。大学とか一緒に行ってるし、まぁ駅までだけど」
海から近いこのマンションは代わりに駅から遠い。バイクで二十分くらい平気でかかる。