俺の質問より先に、こんな時間に電話をした理由を説明した。
「別にいいよ。それでどうしたの?」
『友達の家にずっと泊まってること何も言わないんだね。』
「あ、うん。彰から事情聞いたから。それで、喧嘩してるの?彰と。彰は喧嘩ではないって言ってるんだけど」
電話してきたのは好都合だと思った。こんなこと直接聞く勇気は俺にはなかった。
『彰の言う通り喧嘩では……ないよ。心配してくれたならありがとう。本当に喧嘩ではない。』
二人がそういうのだから別の理由があるのだろう。
「じゃあなんで1ヶ月も友達の家に泊まってるんだ?」
いくら電話だからといってストレートに聞きすぎた。一分程沈黙が続いた。よっぽど言いたくないことなのだろう。
『………えっと…私が逃げただけ。』
逃げた?楓が何から逃げたというのだろうか。
「えっと…何から?」
楓の言ってることも彰の言ってることも理解できなかった。
『現実……かな』
現実…。みんなが人生で一度は逃げたくなるようなものだった。
「そっか……もうそれ以上は理由は聞かないよ。とりあえず、明日にでも帰ってこいよ。俺はお前ら二人が仲良くしないなんて嫌だぞ。」