「今度は俊にあげるよ」
楓はスケッチブックから描いた絵を破って切り離し、俺に渡してきた。
「え、いいのか?」
「この前彰にあげたし、いつかあげようと思ってたから。それに、あの時本当は俊にあげようとしてたけど、なんか彰が欲しそうな目してたから。」
俺にあげようとしていたという事実が単純に嬉しかった。
「あ、ありがとう」
俺は素直に絵を受け取り、隅から隅まで眺めた。
「あのさぁ、楓ちゃんがいいならだけど、私にも描いて欲しいものがあるんだ。」
俺が楓に貰った絵を眺めていると、春斗さんが楓と同じ目線になるように軽く屈んでそう言った。
「いいですけど…どんなものですか?」
「古くなっちゃった写真なんだけど。肌身離さず持ってるんだ」
そう言って携帯ケースの内ポケットから一枚の写真を取り出した。
その写真は俺は見ることはできなかったが、楓は喜んで頷いていた。
「時間がある時でいい、次いつ会えるか分からないけど。朱里なら定期的に来てくれるから朱里に渡してくれればいいよ」