「楓、ほら。これ」
彰はカバンから楓のスケッチブックと色鉛筆を取り出して楓に渡した。
「え？持ってきてくれたの？」
「念の為な。ほら、描けよ。というか描いてくれ。｣
俺もそれには賛成だった。こんな綺麗な景色を楓の手で形として残して欲しかった。なら、写真を撮ればいいんじゃないかと思うが、写真じゃダメという訳では無いが、俺は写真より楓の絵の方が好きだ。
それから楓は彰からスケッチブックと色鉛筆を受け取り、黙々と絵を描いていた。そんな様子をここにいる彰と朱里さんと春斗さんと芽吹さん、そして俺は見ていた。
数分が経ち、ちょうど夕日の優しいオレンジ色が世界を包み込む時、楓の絵が完成した。
「できた！」
その言葉を合図にみんなかま一斉に楓の近くへ集まった。
「相変わらず、上手いな」
いつものように彰は楓に向かって褒めて、続けて俺もいつものように、
「そうだな。いつも通り上手いな」
「上手ですね」
俺の次に芽吹さんが楓を褒め、続いて春斗さんも「上手いな」と褒めた。