「おまたせツキっ!......ってあれ?」



リビングの扉を開けた先。
そこにいるはずのアイツの姿はなかった。


てっきりいつものポジションでイチゴジャムを塗ったトーストを頬張ってるだろうって予想してたんだけど。



「みーくんならもう行ったわよ?」



ああ、そうでした。
自分で言っておいて、すっかり忘れていた。



「行かないと後々めんどくさいからって言ってたけど、あんたまーたみーくんに変なこと言ったんじゃないでしょうね?」



ぎ、ぎくぅっ!


相変わらず鋭いお母さんの言葉に肩がぴくりと跳ねた。



「な、なんにも〜?
さすがにわたしが遅くてツキも呆れたんじゃ、ない?」



キョロキョロ泳ぐ目は明らかに不自然だ。


でもこれは、高校生になるにあたって、わたしとツキが約束したことで...(ズルしたけど)



「まあ、いいわ。
あんたもはやくご飯食べちゃいなさい。
初日から、本当に遅刻しちゃうわよ」



相変わらず挙動不審なわたしに、お母さんはため息をつきながらも、それ以上は何も聞いてこなかった。