階段を半分登ったくらい。
あることを思い出して、階下のツキに声を掛ける。
「ねぇ、ツキ。
やっぱ待ってなくていいよ。
むしろ先に行ってて?」
ツキは一度首を傾げたあと、わたしと同様に何かを思い出したように「ああ」と小さく呟いた。
「ほんとにやんの?」
返ってきた疑問詞のついた言葉に、わたしは笑って返した。
「すぐボロ出ると思うけど?」
「いいからやるのっ!」
なかなか了承してくれないツキに痺れを切らし、ついつい大きな声を出してしまう。
むう、なんでそんなに渋るかなぁ...
階段はあと半分段差が残っている。
そこに立ち止まったまま階下のアイツの言葉を待つ。
けれど、アイツからの言葉は返ってこなくて、代わりに聞こえたのはリビングから出てきたお母さんの声。
「美空。いつまでそうしてるの。
遅れるわよ、早く着替えてきなさい」
「ツキっ!」
「美空っ!」
むぅ......っ!
今日何度目のふくれっ面だろう。
頬を膨らましたまま、お母さんに言われた通り部屋へと続く階段の残りを踏んだ。